退職前の準備
退職代行と失業保険 — 受給の条件に「誰が伝えたか」は無い
受給資格を定める雇用保険法13条の条件に、退職の意思を本人が伝えたか退職代行が伝えたかは含まれていません。条件は離職前2年間に被保険者期間が通算12か月以上あること(特定受給資格者・特定理由離職者は1年間に6か月)で、給付制限の有無は同法33条により離職の理由で分かれ、ハローワークが会社と本人双方の主張を資料で確かめて判定します。会社が資格喪失届と離職証明書を出す義務も、代行を使ったことでは変わりません。ただし59歳未満の人が離職票を希望しないときは、会社は離職証明書を添えないことができます。代行を通じて、離職票が必要だと会社に伝えておくことが大切です。
自分の条件では、いつ・いくらになるか。 退職理由・年齢・勤続年数・月収の4つで計算します。
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受給資格の条件に「辞め方」は入っていない
雇用保険法13条1項は、基本手当を「被保険者が失業した場合」に、離職の日以前2年間に被保険者期間が通算して12か月以上あったときに支給すると定めています。同条2項により、特定受給資格者と特定理由離職者は「2年間」が「1年間」に、「12か月」が「6か月」に読み替えられます。
条文が置いている要件は、被保険者期間と、失業の状態にあることです。退職の意思を本人が伝えたか、退職代行が伝えたかは、要件として書かれていません。同法4条2項も「離職」を「事業主との雇用関係が終了すること」と定義しており、終了をどう伝えたかは定義に含まれていません。
一方で「失業」は、同法4条3項が「労働の意思及び能力を有するにもかかわらず、職業に就くことができない状態」と定めています。退職代行を使ったかどうかとは別に、受給するには働く意思と能力があり、仕事に就けていない状態であることが必要です。
被保険者期間の1か月は暦の月ではなく、数え方に細かな決まりがあります。詳しくは受給資格と被保険者期間の数え方にまとめています。

基本手当は、被保険者が失業した場合において、離職の日以前二年間(略)に、次条の規定による被保険者期間が通算して十二箇月以上であつたときに、この款の定めるところにより、支給する。
要件は被保険者期間と失業の状態で、退職の意思を誰が伝えたかは書かれていません。
給付制限の有無を分けるのは離職理由
給付制限がかかるかどうかも、辞め方ではなく原則として離職の理由で分かれます。雇用保険法33条1項が対象としているのは「自己の責めに帰すべき重大な理由によつて解雇され、又は正当な理由がなく自己の都合によつて退職した場合」です。該当するかどうかは、同条2項により公共職業安定所長が厚生労働大臣の定める基準に従って認定します。
ハローワークが公開している特定受給資格者・特定理由離職者の範囲も、倒産、解雇、賃金の不払い、上司や同僚からの嫌がらせ、退職勧奨といった、離職に至った事実で書かれています。退職の意思を誰が伝えたかを条件にした項目はありません。
判定の材料について、厚生労働省の業務取扱要領は「離職理由の判定については、客観的資料、関係者の証言、離職者の申立等を慎重に判断するものである」としています。退職代行を使ったことで有利にも不利にも扱うという記述は、当サイトが確認した条文・要領・公開資料には見当たりません。反対に、代行業者が会社へ伝えた退職理由が、そのまま判定になるわけでもありません。
特定受給資格者に当たるかどうかは所定給付日数にも関わります。自己都合と会社都合で何が変わるかは自己都合と会社都合の違いで整理しています。自分の離職がどちらに当たるかを当サイトは判断しません。
| 項目 | 決めるもの | 根拠 |
|---|---|---|
| 受給資格 | 離職前2年間(特定受給資格者・特定理由離職者は1年間)の被保険者期間と、失業の状態 | 雇用保険法13条・4条3項 |
| 給付制限の有無 | 重責解雇か、正当な理由のない自己都合退職か | 雇用保険法33条1項 |
| 特定受給資格者・特定理由離職者への該当 | 倒産・解雇・嫌がらせ・退職勧奨など、離職に至った事実 | ハローワーク「範囲の概要」 |
| 判定する機関 | 住所地を管轄するハローワーク(会社と本人の主張を資料で確認) | 雇用保険法33条2項・業務取扱要領50306 |
離職票の手続きは、代行を使っても会社の義務
雇用保険法7条は、雇用する労働者が被保険者でなくなったことを届け出る義務を事業主に課しています。施行規則7条1項により、会社はその事実のあった日の翌日から起算して10日以内に資格喪失届を出し、離職が原因のときは原則として離職証明書を添えます。退職代行を使って辞めたことで、この義務が変わる規定はありません。
注意したいのは同条3項です。本人が離職票の交付を希望しないときは、会社は離職証明書を添えないことができます。離職の日に59歳以上の人はこの扱いの対象外です。会社と直接話さずに辞める場合、離職票が必要だという意思が会社に届いていないと、この扱いになる余地があります。
離職票はハローワークが交付し、会社が離職証明書を添えて届け出た場合は、会社を通じて交付することができます(施行規則17条1項・2項)。退職後の書類の送付先を会社が把握しているかも、確かめておくと安心です。
会社が離職証明書を添えていなかった場合でも、離職した本人は会社に求職者給付に必要な証明書の交付を請求でき、会社は交付しなければなりません(雇用保険法76条3項・施行規則16条)。本人がその離職証明書を添えて請求すれば、ハローワークは離職票を交付します(施行規則17条1項2号・3号)。
しばらく待っても届かないときの手続きは離職票が届かないときにまとめています。
事業主は、第一項の規定により当該資格喪失届を提出する際に当該被保険者が雇用保険被保険者離職票(様式第六号。以下「離職票」という。)の交付を希望しないときは、同項後段の規定にかかわらず、離職証明書を添えないことができる。ただし、離職の日において五十九歳以上である被保険者については、この限りでない。
59歳未満の人が離職票を希望しないときは、会社は離職証明書を添えずに届け出ることができます。
届いた離職票は、離職理由の欄を確認する
厚生労働省のリーフレットは、離職票-2を受け取ったら記載内容をよく確認し、離職理由の欄に必要事項を記載し、記載内容を確認できる資料があれば持参するよう案内しています。離職票-2には会社が記入した離職理由があり、異議があるときは離職者記入欄に自分の主張する理由と具体的な事情を書きます。
異議がある場合は、自分が主張する離職理由を選び、離職に至った原因とその経緯などの具体的事情を記載します。施行規則19条1項は、離職理由に異議があるときは、離職票とあわせて離職の理由を証明することができる書類を提出すると定めています。
離職理由は、会社の主張と本人の主張の両方を資料で確かめたうえで、最終的にハローワークが判定します。リーフレットは「事業主又は離職者の主張のみで判定するものではありません」と明記しています。厚生労働省は、離職票を発行する時点の区分についても、最終的な判定は受給資格の決定時に本人への確認と調査を経て行うと説明しています。
退職代行を使った場合、会社へ伝えられた退職の内容を本人が細かく把握していないことがあります。リーフレットは一身上の都合による離職の資料として「退職願(写)等その内容が確認できる資料」を挙げています。代行業者を通じて会社に伝えた内容の控えなど、退職の経緯が分かるものは手元に残しておくと、窓口で説明する材料になります。
離職票-2を受け取ってからハローワークへ行くまで
記載内容を確認する
会社が記入した離職理由と、具体的事情の欄の内容を確かめます。
離職理由の欄に記入する
会社の記載に異議があれば、自分の主張する理由を選んで具体的事情を書きます。
資料をそろえてハローワークへ行く住所地を管轄するハローワーク
記入した内容を確認できる資料があれば、離職票と一緒に持参します。
失業保険の手続きは本人が行う
基本手当を受けようとする人は、施行規則19条1項により、管轄のハローワークに本人が出頭し、本人であることを確認できる書類を添えるか個人番号カードを提示して、離職票を提出します。退職代行が扱うのは会社との間のやり取りで、この手続きは含まれません。社会保険労務士法27条は、社会保険労務士でない者が報酬を得て申請書等の作成や提出の代行を業として行うことを禁じています。
退職代行の運営主体によって会社と交渉できる範囲が変わる点(弁護士法72条)は退職代行の運営主体と、交渉できる範囲の違いで扱っています。当サイトは退職代行の事業者を推薦・比較しません。
自分の離職理由がどう判定されるか、会社の記載が事実と違うときにどう主張すればよいかといった個別の判断は、住所地のハローワーク、社会保険労務士、または弁護士に相談してください。
よくある質問
- 退職代行を使うと自己都合退職の扱いになりますか?
- 退職代行を使ったこと自体で区分を決める記述は、条文にもハローワークの公開資料にも見当たりません。給付制限の対象は雇用保険法33条1項が離職の理由で定めており、判定はハローワークが会社と本人の主張を資料で確かめて行います。自分の離職がどちらに当たるかを当サイトは判断しません。
- 退職代行で辞めても離職票は受け取れますか?
- 会社の届出義務は、退職代行を使っても変わりません。離職が原因のときは、原則として資格喪失届に離職証明書を添えることになっています(雇用保険法7条・施行規則7条1項)。ただし59歳未満の人が離職票を希望しないときは離職証明書を添えないことができる(同条3項)ため、離職票が必要だと会社に伝えておくことが大切です。
- 会社が離職票を送ってこない場合はどうすればよいですか?
- ハローワークに相談してください。離職した人は会社に求職者給付に必要な証明書の交付を請求でき、会社は交付しなければなりません(雇用保険法76条3項)。被保険者であった人は、いつでもハローワークに資格の確認を請求できます(同法8条)。
- 離職票の離職理由が事実と違うときはどうすればよいですか?
- 離職票を提出するときに異議を申し出ます。施行規則19条1項は、異議がある場合は離職票と離職の理由を証明できる書類を提出すると定めています。離職票-2の離職者の欄に自分の主張と具体的事情を書き、最終的な判定はハローワークが行います。
- 退職代行に失業保険の申請も頼めますか?
- 頼めません。基本手当の手続きは、本人が管轄のハローワークに出頭して行います(施行規則19条1項)。社会保険労務士でない者が報酬を得て申請書等の作成や提出の代行を業として行うことは、社会保険労務士法27条で禁じられています。
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出典と更新情報
- e-Gov 法令検索 雇用保険法13条(基本手当の受給資格)
- e-Gov 法令検索 雇用保険法4条(定義)
- e-Gov 法令検索 雇用保険法33条(給付制限)
- e-Gov 法令検索 雇用保険法7条(被保険者に関する届出)
- e-Gov 法令検索 雇用保険法施行規則7条(被保険者でなくなつたことの届出)
- e-Gov 法令検索 雇用保険法76条(報告等)
- e-Gov 法令検索 雇用保険法施行規則16条(離職証明書の交付)
- e-Gov 法令検索 雇用保険法施行規則17条(離職票の交付)
- e-Gov 法令検索 雇用保険法施行規則19条(受給資格の決定)
- e-Gov 法令検索 雇用保険法8条(確認の請求)
- ハローワークインターネットサービス「特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲の概要」
- 厚生労働省「離職された方へ — 離職票-2の離職理由欄等の記載方法について」
- 厚生労働省「特定受給資格者となる離職理由の判定基準」
- 厚生労働省「雇用保険に関する業務取扱要領(一般被保険者に対する求職者給付・第4)」(令和8年4月版)
- e-Gov法令検索「社会保険労務士法」(第2条 業務、第27条 業務の制限)
最終更新: 2026年9月26日 / 次回の制度改定予定: 2027年8月1日