退職前の準備
残業で退職したら会社都合? — 失業保険の45時間・100時間・80時間
長時間の残業で辞めた場合に、失業保険(基本手当)で特定受給資格者(いわゆる会社都合)にあたるかを見る時間数の基準は、雇用保険法施行規則36条5号のイ・ロ・ハの3つで、どれか1つに当たれば足りる書き方です。どれも、離職の日の属する月の前6か月について、時間外労働と休日労働を合わせた時間で見ます。イは、連続した3か月以上の期間に限度時間に相当する時間数を超えたことで、厚生労働省の業務取扱要領はこの時間数を労働基準法36条4項の1か月45時間と説明しています(子の養育や家族の介護をしている人の一部は、省令の括弧書きで別の時間数)。ロは、いずれかの月に1か月100時間以上だったこと、ハは、連続した2か月以上の期間の平均が1か月80時間を超えたことです。会社が36協定で守る上限とは別の規定で、当てはまるかどうかはハローワークが資料をもとに判断します。
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残業で辞めたときの基準は、施行規則36条5号の3つ
残業が多くて辞めた場合に「会社都合」として扱われるかは、雇用保険の特定受給資格者にあたるかどうかの問題です。雇用保険法23条2項は特定受給資格者を定め、その2号で、解雇(自己の責めに帰すべき重大な理由によるものを除く)その他の厚生労働省令で定める理由により離職した者を挙げています。その理由を挙げているのが雇用保険法施行規則36条で、長時間の時間外労働については、同条5号のイ・ロ・ハの3つが時間数で書かれています。
3つは「次のいずれかに該当することとなつたこと」として並べられていて、どれか1つに当たれば足りる書き方です。どれも数えるのは時間外労働と休日労働を合わせた時間で、見る期間は離職の日の属する月の前6か月です。
同じ5号のニは、事業主が危険や健康障害の生ずるおそれを行政機関から指摘されたのに、事業所でそれを防止するために必要な措置を講じなかったことで、時間数の基準ではありません。
施行規則36条のほかの号も含めた全体は特定受給資格者の範囲にまとめています。この記事は、3つの時間数の基準を業務取扱要領がどう説明しているかと、何を確かめておくかに絞ります。
| 号 | 見る期間 | 基準(省令の文言の要約) |
|---|---|---|
| イ | 離職の日の属する月の前6か月のうち、連続した3か月以上の期間 | 労働基準法36条3項に規定する限度時間に相当する時間数を超えて、時間外労働と休日労働が行われた |
| ロ | 同じ6か月のうち、いずれかの月 | 1か月100時間以上、時間外労働と休日労働が行われた |
| ハ | 同じ6か月のうち、連続した2か月以上の期間 | 時間外労働と休日労働を平均して、1か月80時間を超えた |
イ — 限度時間(要領の説明では1か月45時間)を超える月が連続3か月以上
イは、労働基準法36条3項に規定する限度時間に相当する時間数を超えたかで見る書き方で、省令は時間数を直接書かずに労働基準法を引いています。業務取扱要領は、この時間数を、労働基準法36条4項の1か月を単位とした延長時間の限度である45時間と説明しています。
要領によると、45時間を超える時間外労働と休日労働が、離職の日の属する月の前6か月のうち連続した3か月以上の期間に連続して行われていて、そのために離職した場合が当たります。月の区切りは、賃金締切日を起算日とする各月です。
小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者と、要介護状態にある対象家族を介護する労働者のうち、育児・介護休業法17条1項各号(介護の場合は18条1項で準用)のいずれにも該当しない人については、省令に括弧書きがあり、限度時間に代えて、同項に規定する「制限時間」に相当する時間数で見る書き方です。要領の説明は限度時間の場合だけで、制限時間の場合の数え方は書かれていません。
労働基準法36条4項には、同法32条の4の制度で働かせる一部の場合について、別の時間数を定める括弧書きもあります。要領はこの場合の扱いを書いていません。
「労働基準法第 36 条第3項に規定する限度時間に相当する時間数」とは同条第4項 1 か月を単位とした延長時間の限度である 45 時間を超える時間外労働及び休日労働が離職の日の属する月の前 6 月のうちいずれか連続した 3 か月(賃金締切日を起算日とする各月)以上の期間に連続して行われているために離職した場合が該当する。
離職の日の属する月の前6か月のうち、限度時間を超える時間外労働と休日労働が、賃金締切日を起点に区切った月で連続3か月以上続き、そのために辞めた場合、という説明です。
ロ・ハ — 1か月100時間以上の月と、平均80時間超
ロは、離職の日の属する月の前6か月のうち、いずれかの月に1か月100時間以上の時間外労働と休日労働が行われたことです。1か月あれば足りる書き方で、境目は「以上」です。
ハは、同じ6か月のうち、いずれか連続した2か月以上の期間の時間外労働と休日労働を平均して、1か月80時間を超えたことです。平均を取る期間は2か月に限られず、それより長い連続した期間でもよい書き方で、境目は「超えて」です。
業務取扱要領は、ロ・ハについて、離職の日の属する月の前6か月の中に、退職を申し出たことで有給休暇を取得している場合や、体調不良などやむを得ない理由で時間外労働と休日労働が行われていない月がある場合は、その月を除いて算定するとしています。イについても同じ趣旨の説明があり、そちらは「時間外労働が行われていない月」と書かれています。賃金締切日で月を区切るという説明は、イについてだけ書かれています。
たとえば、退職を申し出て有給休暇を取り、時間外労働も休日労働もなかった月が、離職の日の属する月の前6か月の中にある場合です。要領の書き方では、その月は除いて算定します。どの月を除き、どう数えるかはハローワークが判断します。
離職の日の属する月の前の 6 月において退職を申し出たことにより有給休暇を取得している場合や体調不良等のためにやむを得ない理由により時間外労働及び休日労働が行われていない月がある場合はこれを除いて算定するものである。
退職を申し出たことで有給休暇を取得している月や、体調不良などのやむを得ない理由で時間外労働と休日労働が行われていない月は、除いて算定するという説明です。
会社が守る36協定の上限とは、別の規定
労働基準法36条は、会社が、労働者の過半数で組織する労働組合(ない場合は労働者の過半数を代表する者)と書面で協定(いわゆる36協定)をして行政官庁に届け出た場合に、労働時間を延長し、休日に労働させることができるとしています(1項)。延長できる時間は、通常予見される時間外労働の範囲内で、限度時間を超えない時間に限られ(3項)、限度時間は原則として1か月45時間・1年360時間です(4項)。
臨時的に限度時間を超えて働かせる必要がある場合の協定でも、協定できる1か月の時間外労働と休日労働の時間は100時間未満の範囲に限られます(5項)。実際に働かせた時間についても、会社は、1か月の時間外労働と休日労働を100時間未満にし、各月にその直前の数か月を加えたそれぞれの期間の1か月当たりの平均を80時間を超えないようにしなければなりません(6項2号・3号)。
数は同じでも、雇用保険の基準とは書き方が違います。労働基準法は会社が守る上限として100時間未満、平均80時間を超えないことを求め、施行規則36条5号は離職理由の基準として1か月100時間以上、平均が1か月80時間を超えたことを挙げています。平均を取る期間の決め方も違います。省令5号のイ・ロ・ハは時間外労働と休日労働の時間数で書かれていて、会社が労働基準法に違反したかどうかには触れていません。
労働基準法には、一部の業務や事業について、これらの上限の規定を適用しない、または読み替える定めもあります(36条11項、附則139条〜141条)。そうした業務や事業で雇用保険の基準の扱いが変わるかどうかは、業務取扱要領に書かれていません。
たとえば、会社が、要領のいう「労働時間を超えて労働させることができる特別条項付き協定」を締結していて、限度時間を超える時間外労働と休日労働が続いていた場合です。限度時間の基準(イ)について、要領は、この協定が締結されている場合も同様に判断するとしています。協定があることで基準の外になる、とは書かれていません。当てはまるかどうかはハローワークが判断します。
| 項目 | 労働基準法36条(会社が守る上限) | 雇用保険法施行規則36条5号(離職理由の基準) |
|---|---|---|
| 限度時間 | 原則として1か月45時間・1年360時間(4項)。延長はこれを超えない時間に限る(3項) | 時間外労働と休日労働が限度時間に相当する時間数を超える月が、連続3か月以上(イ。要領の説明は1か月45時間) |
| 1か月の時間 | 時間外労働と休日労働の合計が100時間未満(6項2号) | 時間外労働と休日労働が、いずれかの月に1か月100時間以上(ロ) |
| 平均 | 各月にその直前の数か月を加えたそれぞれの期間の時間外労働と休日労働の平均が、1か月80時間を超えない(6項3号) | 連続した2か月以上の期間の時間外労働と休日労働の平均が、1か月80時間を超えた(ハ) |
| 性質 | 会社が守らなければならない上限 | ハローワークが離職理由を判断するときの基準(会社が労働基準法に違反したかどうかには触れていない) |
特定受給資格者と判断されると変わること
ハローワークに特定受給資格者と判断されると、正当な理由のない自己都合退職と比べて、離職理由による給付制限、受給資格の要件、所定給付日数の表、国民健康保険料の軽減が変わります。
給付制限について、業務取扱要領 52203 は、退職に正当な理由があり給付制限を受けない場合として、この記事の3つの時間外労働と休日労働の場合を挙げ、50305 ロ (ホ) を参照するとしています。
所定給付日数の具体的な日数は失業保険の早見表、受給資格の数え方は受給資格と被保険者期間の数え方、国民健康保険料の軽減と届出は国保の失業軽減、自己都合との区分の違いは自己都合と会社都合の違いにまとめています。
| 項目 | 正当な理由のない自己都合 | 特定受給資格者と判断された場合 |
|---|---|---|
| 離職理由による給付制限 | 原則1か月(離職日が2025年4月1日以降の場合) | なし |
| 受給資格の要件 | 離職前2年間に被保険者期間12か月以上 | 離職前1年間に被保険者期間6か月以上(2年間に12か月以上でもよい) |
| 所定給付日数 | 一般の離職者の表(90〜150日。就職困難者は別の表) | 特定受給資格者の表(90〜330日。就職困難者は別の表) |
| 国民健康保険料の軽減 | 対象外 | 対象(国民健康保険の被保険者で、基本手当の受給資格がある人に限る。離職時に65歳以上の人を除く。市区町村への届出が必要) |
離職票-2と、時間外労働の時間が分かる資料
離職票-2の離職理由の欄には、まず会社が離職理由を記入します。会社の記入と自分の事情が違うと考えるときは、離職者の記入欄で自分の主張する離職理由を選び、離職に至った原因と経緯などの具体的な事情を書きます。
会社と本人の主張が違う場合、ハローワークは客観的な事実を確かめ、本人の申立てを聴いたうえで離職理由を認定します。業務取扱要領は、離職理由の判定では、客観的資料、関係者の証言、離職者の申立等を慎重に判断するとしています。
厚生労働省のリーフレットは、持参する資料の例として「タイムカード(写)等時間外労働の時間が分かるもの」を挙げています。この一覧は、通常、離職者が所持している可能性のある資料に限って載せたもので、可能であれば、それ以外の資料も持参するよう求めています。
判定の結果は、受給資格者証または受給資格通知に印字される「理由」の番号で知らされます。番号の読み方は離職理由コード一覧、判定に納得できないときの手続きは離職理由に納得できないときにまとめています。
離職票-2を受け取ってからハローワークへ行くまで
記載内容を確認する
会社が記入した離職理由と、具体的事情の欄の内容を確かめます。
離職理由の欄に記入する
会社の記入に異議があれば、自分の主張する離職理由を選び、離職に至った原因と経緯などの具体的な事情を書きます。
資料をそろえてハローワークへ行く住所地を管轄するハローワーク
記入した内容を確認できる資料、たとえばタイムカード(写)など時間外労働の時間が分かるものを持っていれば、ハローワークへ持参します。
在職中に確かめておくことと、相談先
3つの基準は、離職の日の属する月の前6か月の時間外労働と休日労働の時間で見ます。在職中に、自分の時間外労働と休日労働の時間が分かるものを確かめておくと、離職票-2を受け取ったときに、具体的な事情を書き、資料を持参する材料になります。
長時間の残業そのものについて相談したいときは、厚生労働省の総合労働相談コーナーが、職場のトラブルに関する相談や解決のための情報提供をワンストップで行っています。あらゆる分野の労働問題が対象で、無料・予約不要です。
心身の不調で仕事を続けるのがつらいときに、辞める前に確かめておきたい休職と受給期間の延長は退職と転職の順番にまとめています。
自分の離職が特定受給資格者にあたるか、会社の記入が事実と違うときにどう申し出ればよいかといった個別の判断は、住所地のハローワークか社会保険労務士に相談してください。
よくある質問
- 残業が45時間を超えた月が1か月だけでも、会社都合になりますか?
- 1か月だけでは、限度時間の基準(イ)の文言には当たりません。イは、限度時間に相当する時間数(業務取扱要領の説明では1か月45時間)を超える時間外労働と休日労働が、離職の日の属する月の前6か月のうち連続した3か月以上の期間に行われたことを求めています。1か月だけで見る基準はロで、時間外労働と休日労働を合わせて1か月100時間以上です。特定受給資格者にあたるかどうかは、ハローワークが資料をもとに判断します。
- 残業がちょうど100時間の月も、基準に入りますか?
- はい、雇用保険法施行規則36条5号ロは1か月100時間「以上」と書いているので、時間外労働と休日労働を合わせてちょうど100時間の月も含む書き方です。平均の基準(ハ)は1か月80時間を「超えて」なので、平均がちょうど80時間では足りない書き方です。当てはまるかどうかはハローワークが判断します。
- 休日労働の時間も合わせて数えますか?
- はい、雇用保険法施行規則36条5号のイ・ロ・ハは、いずれも「時間外労働及び休日労働」と書かれていて、時間外労働だけでなく休日労働も合わせた時間で見る書き方です。当てはまるかどうかはハローワークが資料をもとに判断します。
- 会社が36協定を結んでいれば、基準の対象外ですか?
- いいえ、協定があれば対象外になるとは書かれていません。限度時間の基準(イ)について、業務取扱要領は、労働時間を超えて労働させることができる特別条項付き協定が締結されている場合も同様に判断するとしています。施行規則36条5号のイ・ロ・ハは時間外労働と休日労働の時間数で書かれていて、会社が労働基準法に違反したかどうかには触れていません。当てはまるかどうかはハローワークが判断します。
- 退職を申し出て有給休暇を取った月は、どう数えますか?
- 業務取扱要領は、退職を申し出たことで有給休暇を取得している月などを除いて算定するとしています。除くのは、離職の日の属する月の前6か月の中にある、そうした月や、体調不良などやむを得ない理由で時間外労働(1か月100時間以上の基準と、平均が1か月80時間を超える基準では、時間外労働及び休日労働)が行われていない月です。具体的にどう数えるかはハローワークが判断します。
- 残業時間を示す資料は、何を持っていけばよいですか?
- 厚生労働省のリーフレットは、離職票-2の離職理由に異議があるときに持参する資料の例として「タイムカード(写)等時間外労働の時間が分かるもの」を挙げています。この一覧は、通常、離職者が所持している可能性のある資料に限ったもので、可能であれば、それ以外の資料も持参するよう求めています。資料をもとに離職理由を判定するのはハローワークです。
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出典と更新情報
- e-Gov 法令検索 雇用保険法施行規則36条(特定受給資格者の範囲)
- e-Gov 法令検索 雇用保険法23条(特定受給資格者)
- 厚生労働省「雇用保険に関する業務取扱要領(一般被保険者に対する求職者給付・第4)」(令和8年4月版)
- e-Gov 法令検索 労働基準法36条(時間外及び休日の労働)
- 厚生労働省「雇用保険に関する業務取扱要領(一般被保険者に対する求職者給付・第9〜第12)」(令和8年8月版)
- e-Gov 法令検索 雇用保険法33条(給付制限)
- 厚生労働省「令和7年4月以降に教育訓練等を受ける場合、給付制限が解除されます」
- e-Gov 法令検索 雇用保険法13条(基本手当の受給資格)
- e-Gov 法令検索 雇用保険法22条(所定給付日数)
- ハローワークインターネットサービス「基本手当の所定給付日数」
- e-Gov法令検索「国民健康保険法施行令」(第29条の7の2 特例対象被保険者等の給与所得を百分の三十とする算定の特例)
- 厚生労働省「離職された方へ — 離職票-2の離職理由欄等の記載方法について」
- 厚生労働省「総合労働相談コーナーのご案内」
最終更新: 2026年10月4日 / 次回の制度改定予定: 2027年8月1日