会社都合として扱われる範囲 — 残業100時間・賃金85%・退職勧奨を省令はどう書いているか
「会社都合」として扱われる特定受給資格者の範囲は、雇用保険法23条2項が「厚生労働省令で定める理由」と書くだけで、具体的な基準は雇用保険法施行規則36条にあります。同条は12の理由を挙げていて、数値の基準があるのは、賃金の未払いが3分の1を上回ったとき、賃金が前6か月のいずれかの月の85%を下回ったとき、時間外労働が1か月100時間以上または連続2か月以上の平均で月80時間を超えたときなどです。どの理由に当たるかを判定するのはハローワークです。
自分の条件では、いつ・いくらになるか。 退職理由・年齢・勤続年数・月収の4つで計算します。
シミュレーターで計算する基準は法律ではなく省令にある
雇用保険法23条2項は特定受給資格者を2つの号で定めています。1号は倒産や事業所の縮小・廃止に伴う離職、2号は「解雇その他の厚生労働省令で定める理由」による離職です。
条文を読んでも、残業が何時間なら該当するのかは書かれていません。数値の基準はすべて雇用保険法施行規則36条にあり、法律は省令に委ねる形になっています。「会社都合の条件」を調べるときに読むべきなのは、法律ではなくこの省令です。
特定受給資格者になると、所定給付日数が特定受給資格者の表になり、給付制限もかかりません。区分ごとの扱いは離職理由コード一覧にまとめてあります。
前項の特定受給資格者とは、次の各号のいずれかに該当する受給資格者(前条第二項に規定する受給資格者を除く。)をいう。
続く2号が「解雇その他の厚生労働省令で定める理由」とし、中身を省令へ送っています。
数値の基準がある理由
施行規則36条が挙げる12の理由のうち、金額や時間で線が引かれているものを先に並べます。読者が知りたいのはたいていここですが、数字のない理由のほうが数は多い点は後の節で扱います。
賃金の未払いについては読み方に注意が要ります。条文は「賃金の額を三で除して得た額を上回る額が支払期日までに支払われなかつたこと」なので、見るのは支払われた額ではなく、支払われなかった額が3分の1を超えたかどうかです。
| 号 | 主題 | 省令が置いている基準 |
|---|---|---|
| 三 | 賃金の未払い | 未払いの額が賃金の3分の1を上回った |
| 四 | 賃金の低下 | 前6か月のいずれかの月の85%を下回った(予期し得ず) |
| 五イ | 時間外労働 | 労働基準法36条3項の限度時間を超える月が連続3か月以上 |
| 五ロ | 時間外労働 | いずれかの月に1か月100時間以上 |
| 五ハ | 時間外労働 | 連続2か月以上の平均で1か月80時間超 |
| 七 | 有期契約 | 3年以上引き続き雇用された後に更新されなかった |
| 十 | 休業 | 使用者の責めに帰すべき休業が引き続き3か月以上 |
時間外労働は3つの数え方がある
施行規則36条5号はイからホまでを並べていて、そのうち時間外労働と休日労働の基準はイ・ロ・ハの3つです(ニは行政機関から指摘されたにもかかわらず危険・健康障害を防ぐ措置を講じなかったこと、ホは妊娠・出産・育児介護を理由とする不当な制限や不利益取扱いで、いずれも数値の線はありません)。どれか1つに当たれば足りる書き方で、期間の取り方がそれぞれ違います。
イは労働基準法36条3項の限度時間を超える月が連続3か月以上あった場合です。省令は時間数を直接書かず、労働基準法を引いています。育児や介護をしている労働者については、育児・介護休業法が定める制限時間に読み替えられます。
ロは1か月あたり100時間以上の月がいずれかにあった場合、ハは連続した2か月以上の平均が1か月あたり80時間を超えた場合です。いずれも見るのは離職の日の属する月の前6か月です。
離職の日の属する月の前六月のうちいずれかの月において一月当たり百時間以上、時間外労働及び休日労働が行われたこと。
時間外労働と休日労働を合わせて数えます。1か月でも該当すれば足ります。
- イ — 労働基準法36条3項の限度時間を超える月が連続3か月以上
- ロ — いずれかの月に1か月あたり100時間以上
- ハ — 連続2か月以上の期間の平均が1か月あたり80時間超
数字のない理由のほうが数は多い
施行規則36条には、評価を要する書き方の号が並んでいます。二号は「労働契約の締結に際し明示された労働条件が事実と著しく相違したこと」、八号は「事業主又は当該事業主に雇用される労働者から就業環境が著しく害されるような言動を受けたこと」、九号は「事業主から退職するよう勧奨を受けたこと」です。
六号は職種転換等に際して職業生活の継続のために必要な配慮が行われていないこと、十一号は事業所の業務が法令に違反したことを挙げています。いずれも数値の線はありません。
数値のある号だけを並べると、時間や金額で当てはまらない読者が「自分は該当しない」と読んでしまいます。省令が置いている理由は12あり、数値で線が引かれているのは三号・四号・五号・七号・十号の5つだけです。前の節の表が7行あるのは、五号をイ・ロ・ハに分けて示しているためで、号として数えれば5つになります。
- 一号 — 解雇された(自己の責めに帰すべき重大な理由によるものを除く)
- 二号 — 明示された労働条件が事実と著しく相違した
- 六号 — 職種転換等で職業生活の継続のための配慮が行われていない
- 七の二号 — 更新されると明示された有期契約が更新されなかった(次の節で扱う)
- 八号 — 就業環境が著しく害されるような言動を受けた
- 九号 — 事業主から退職するよう勧奨を受けた
- 十一号 — 事業所の業務が法令に違反した
有期契約には2つの号がある
七号は「期間の定めのある労働契約の更新により三年以上引き続き雇用されるに至つた場合において当該労働契約が更新されないこととなつたこと」、七の二号は「期間の定めのある労働契約の締結に際し当該労働契約が更新されることが明示された場合において当該労働契約が更新されないこととなつたこと」です。
前者は実際に3年以上続いたかどうか、後者は更新される旨が明示されていたかどうかで、見ているものが違います。契約書や労働条件通知書の記載がそのまま根拠になります。
有期契約が更新されなかった場合は、特定受給資格者ではなく特定理由離職者として扱われることもあります。この2つは所定給付日数の扱いが分かれるので、自己都合と会社都合の違いで区分を確かめてください。
倒産と事業所の縮小・廃止は1号
雇用保険法23条2項1号は、倒産に伴う離職を特定受給資格者としています。条文が挙げる倒産は、破産手続開始・再生手続開始・更生手続開始・特別清算開始の申立てと、それ以外の厚生労働省令で定める事由です。
同じ号には事業所の縮小または廃止に伴う離職も含まれます。会社が続いていても、勤めていた事業所がなくなった場合はこちらに当たりうるということです。
判定するのはハローワーク
本サイトは省令が置いている基準を説明しますが、個別の離職がどの号に当たるかは判断しません。判定は、事業主の主張と離職者の主張の双方を離職票-2で把握し、それぞれを確認できる資料で事実確認をしたうえで、公共職業安定所が行います。
会社が記載した離職理由に異議があるときは、離職票を提出する時点で申し出ます。雇用保険法施行規則19条1項は、離職理由に異議がある場合には離職票に加えて離職の理由を証明することができる書類を提出すると定めています。提出のときに交付されるものは受給資格者証と受給資格通知の見方で扱っています。
主張の裏づけになるのは、タイムカード、賃金台帳、給与明細、労働条件通知書、業務命令の記録などです。何を持参すべきかは事案によるので、離職票が届いたらハローワークに相談してください。
よくある質問
- 残業が月80時間だと会社都合になりますか?
- 80時間そのものではなく、連続2か月以上の期間の平均が1か月あたり80時間を超えたかで見ます(雇用保険法施行規則36条5号ハ)。1か月だけなら100時間以上が基準です(同号ロ)。判定はハローワークが資料をもとに行います。
- 給料の未払いはいくらから対象ですか?
- 支払われなかった額が賃金の3分の1を上回った場合です(雇用保険法施行規則36条3号)。3分の1しか支払われなかった場合ではなく、未払いの額のほうを見ます。退職手当はこの賃金から除かれます。
- パワハラで辞めた場合はどの号ですか?
- 施行規則36条8号が「事業主又は当該事業主に雇用される労働者から就業環境が著しく害されるような言動を受けたこと」を挙げています。数値の基準はなく、資料をもとにハローワークが判断します。
- 退職勧奨に応じた場合も会社都合ですか?
- 施行規則36条9号が「事業主から退職するよう勧奨を受けたこと」を理由として挙げています。応じたかどうかではなく、勧奨を受けたことが号の内容です。ただし当てはめはハローワークが行います。
- 自分で「会社都合にしてほしい」と言えますか?
- 離職票を提出するときに異議を申し出ることができます。雇用保険法施行規則19条1項は、離職理由に異議がある場合は離職票と離職の理由を証明できる書類を提出すると定めています。最終的な判定は公共職業安定所が行います。
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出典と更新情報
- e-Gov 法令検索 雇用保険法23条(特定受給資格者の所定給付日数と範囲)
- e-Gov 法令検索 雇用保険法施行規則36条(特定受給資格者の範囲となる理由)
- e-Gov 法令検索 雇用保険法施行規則19条(受給資格の決定)
- ハローワークインターネットサービス「特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲の概要」
- 厚生労働省「離職された方へ — 離職票-2の離職理由欄等の記載方法について」
データ最終確認: 2026年9月7日 / 次回の制度改定予定: 2027年8月1日