不正受給になると何が起きるか — 返還命令と、その額の2倍以下の納付命令
偽りその他不正の行為で失業等給付を受けると、雇用保険法10条の4により2つの命令を受けることがあります。1つは支給された額の全部または一部の返還、もう1つは不正に受給した額の2倍に相当する額以下の金額の納付です。あわせて同法34条により、以後その受給資格に基づく基本手当は支給されません。条文に「3倍」という言葉はなく、返還と納付を合計した結果として最大3倍になるという構造です。
自分の条件では、いつ・いくらになるか。 退職理由・年齢・勤続年数・月収の4つで計算します。
シミュレーターで計算する命令は2本立てになっている
雇用保険法10条の4第1項は、政府が命じることができるものを2つ並べています。1つ目は支給した失業等給付の全部または一部を返還すること、2つ目は不正の行為により支給を受けた額の2倍に相当する額以下の金額を納付することです。
納付を命じる額は「厚生労働大臣の定める基準により」決まると条文が書いており、常に2倍になるとは限りません。上限が2倍だということです。
ハローワークの案内も「返還を命じた不正受給金額とは別に、直接不正の行為により支給を受けた額の2倍に相当する額以下の金額の納付を命ぜられる」と、別建てであることを明示しています。返還と納付を足すと最大で受給額の3倍になりますが、条文に3倍という語はありません。
偽りその他不正の行為により失業等給付の支給を受けた者がある場合には、政府は、その者に対して、支給した失業等給付の全部又は一部を返還することを命ずることができ、また、厚生労働大臣の定める基準により、当該偽りその他不正の行為により支給を受けた失業等給付の額の二倍に相当する額以下の金額を納付することを命ずることができる。
返還と納付は別の命令で、納付の額は2倍が上限です。
| 命令 | 額 | 条文の書き方 |
|---|---|---|
| 返還命令 | 支給した失業等給付の全部または一部 | 「全部又は一部を返還することを命ずることができ」 |
| 納付命令 | 不正に受給した額の2倍に相当する額以下 | 「厚生労働大臣の定める基準により」額が決まる |
以後の基本手当は支給されない
雇用保険法34条1項は、偽りその他不正の行為により求職者給付または就職促進給付の支給を受け、または受けようとした者には、その日以後、基本手当を支給しないと定めています。ただし書には「やむを得ない理由がある場合」の例外があります。
注意すべきは「受けようとした」という書き方です。実際に振り込まれたかどうかは要件になっていません。申告した時点で対象になりうるということです。
一方で同条2項は、その日以後に新たに受給資格を取得した場合には、その新しい受給資格に基づく基本手当を支給すると定めています。一生受け取れなくなるわけではありません。
偽りの証明をした事業主も連帯して命じられる
雇用保険法10条の4第2項は、事業主や職業紹介事業者等、指定教育訓練実施者が偽りの届出・報告・証明をしたために給付が支給された場合について定めています。政府はその事業主等に対し、給付を受けた者と連帯して、返還または納付を命じられた金額の納付を命じることができます。
離職票の記載を事実と違う内容にするよう持ちかけられることがありますが、この条文があるため、それは会社の側にも金銭的な責任が及ぶ話になります。
離職理由に納得できない場合の正規の手続は、離職票を提出するときに異議を申し出ることです。手続は受給資格者証と受給資格通知の見方にまとめてあります。
納付を怠ると滞納処分の対象になる
雇用保険法10条の4第3項は、返還または納付を命じられた金額の納付を怠った場合について、労働保険の保険料の徴収等に関する法律27条と41条2項を準用しています。同法27条は督促と滞納処分を定める規定です。
請求されて終わりではなく、強制的に徴収される仕組みが用意されているということです。分割の可否など個別の取扱いは、命令を出したハローワークとの相談になります。
どういう行為が対象になるか
条文の書き方は「偽りその他不正の行為」で、行為の類型を列挙してはいません。ハローワークインターネットサービスは典型例を別に案内しており、失業認定申告書に事実と異なる記載をすることがその中心にあります。
受給中に働いた日と収入は、失業認定申告書ですべて申告する義務があります。申告した収入に応じて減額される仕組みと、申告しなかった場合の扱いは失業保険を受給中のアルバイトで扱っています。
本サイトは、ある行為が不正受給に当たるかどうかを判断しません。認定するのは公共職業安定所長です。
「増やせる」とうたう事業者に注意する
国民生活センターは2025年12月3日に、失業保険の給付額等を増やすことができるとうたう申請サポートについて注意喚起を公表しています。相談のなかには、うつ病と診断されるためのマニュアルを渡された、事業者が指定するオンライン診療の受診を指示された、というものが含まれます。詳細は申請サポートの相談が5年で5倍にまとめました。
事実と異なる内容で申請すれば、命令を受けるのは本人です。事業者に言われたとおりに申請した場合でも、返還と納付の名宛人は給付を受けた本人になります。
気づいたら先に申し出る
申告の誤りに気づいたときは、次の認定日を待たずにハローワークへ申し出ることになります。法34条1項が「受けようとした」段階を対象にしている以上、支給の前に訂正するほうが結果は軽くなります。
本サイトは制度の説明までで、個別の事案の相談には応じられません。窓口は受給資格の決定を受けた住所地のハローワークです。
よくある質問
- 不正受給になると、いくら払うことになりますか?
- 返還命令と納付命令の2つがあります。返還は支給された額の全部または一部、納付は不正に受給した額の2倍に相当する額以下です(雇用保険法10条の4第1項)。合計すると最大で受給額の3倍になりますが、条文に3倍という語はありません。
- もう二度と失業保険を受けられなくなりますか?
- なりません。支給されないのは、その受給資格に基づく基本手当です(雇用保険法34条1項)。同条2項は、その後に新たに受給資格を取得した場合には、新しい受給資格に基づく基本手当を支給すると定めています。
- 会社が書いた離職理由が事実と違う場合はどうなりますか?
- 事業主が偽りの届出・報告・証明をしたために給付が支給されたときは、政府はその事業主に対し、受給した本人と連帯して納付を命じることができます(雇用保険法10条の4第2項)。離職理由への異議は、離職票を提出するときに申し出ます。
- 払わないとどうなりますか?
- 滞納処分の対象になります。雇用保険法10条の4第3項が、労働保険の保険料の徴収等に関する法律27条(督促及び滞納処分)を準用しているためです。取扱いは命令を出したハローワークとの相談になります。
- うっかり申告を忘れた場合も不正受給ですか?
- 条文の要件は「偽りその他不正の行為」で、認定するのは公共職業安定所長です。本サイトでは個別の判断はしません。気づいた時点で、支給を受ける前にハローワークへ申し出ることになります。
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出典と更新情報
- e-Gov 法令検索 雇用保険法10条の4(返還命令等)
- e-Gov 法令検索 雇用保険法34条(不正受給による給付制限)
- ハローワークインターネットサービス「基本手当について」
- e-Gov法令検索「雇用保険法」
データ最終確認: 2026年9月7日 / 次回の制度改定予定: 2027年8月1日