退職前の準備
ボーナスをもらってから辞めるとき — 就業規則・失業保険・保険料
賞与(ボーナス)を払うかどうか、誰に払うかは、勤め先の就業規則などの定めで決まります。厚生労働省はモデル就業規則の解説で、支給日などの一定の日に在籍した人に支給を限る規定を設けることも可能と書いています。失業保険(基本手当)の日額のもとになる賃金日額からは3か月を超える期間ごとに支払われる賃金が除かれるので、年2回の賞与のようなものは、受け取ってから辞めても日額をその分だけ増やしません。前月から引き続き健康保険・厚生年金保険に加入している人が月末より前の日に辞めると、その月のうち退職日までに受けた賞与に保険料はかかりません(健康保険組合の加入者は組合に確認を)。ただし同じ月のうちに次の勤め先で加入しない限り、その月は国民健康保険(または任意継続・家族の被扶養者)と国民年金の対象です。月末に辞めると、その月の賞与にも保険料がかかります。
自分の条件では、いつ・いくらになるか。 退職理由・年齢・勤続年数・月収の4つで計算します。
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賞与を受け取ってから辞めるときに決まること
賞与(ボーナス)を受け取ってから辞めたいときに主に確かめることは、賞与が出るか、失業保険(基本手当)の日額、退職する月に受けた賞与の社会保険料(健康保険・厚生年金保険の保険料)、住民税、年末調整の5つです。決めるものはそれぞれ違い、賞与が出るかは勤め先の定めで、残りの4つは法律と行政の取扱いで決まります。
当サイトは、賞与を受け取ってから辞めるべきか、いつ辞めるのがよいかを勧めません。この記事は、辞める時期を自分で決めるときに知っておく制度の事実を並べます。
| 確かめること | 決めるもの | 要点 |
|---|---|---|
| 賞与が出るか | 勤め先の就業規則などの定め | 賞与は法律で設けることが義務付けられているものではない(厚生労働省のモデル就業規則の解説)。支給対象者・算定対象期間・支給日を就業規則で確かめる |
| 失業保険(基本手当)の日額 | 雇用保険法17条1項と業務取扱要領 | 年2回の賞与のようなものは賃金日額の計算に入らず、日額をその分だけ増やさない |
| 退職する月に受けた賞与の社会保険料 | 健康保険法156条、厚生年金保険法19条・81条 | 前月から引き続き加入している人が月末より前の日に辞めると、その月のうち退職日までに受けた賞与に保険料はかからない。ただし、同じ月のうちに次の勤め先で加入しない限り、その月は国民健康保険(または任意継続・家族の被扶養者)と国民年金の対象になる。月末に辞めるとかかる。健康保険組合に加入している人は組合に確かめる |
| 住民税 | 地方税法321条の5第2項 | 辞めた月によって、残りの税額を最後の給与や退職手当等から一括で徴収されるか、自分で納めるかが変わる |
| 年末調整 | 国税庁の取扱い(No.2665) | 12月に支給されるべき給与等の支払を受けた後に辞めた人は、年の中途で行う年末調整の対象になる(扶養控除等(異動)申告書を提出している一定の人)。冬の賞与を受け取っただけで、12月に支給期の来る毎月の給与を受け取る前に辞めた場合に当たるかは、国税庁の説明からは決められない |
賞与が出るかは、就業規則などの定めで決まる
厚生労働省はモデル就業規則の解説で、賞与は労働基準法その他の法律によって設けることが義務付けられているものではない、と書いています。賞与を支給する場合は、支給対象時期、賞与の算定基準、査定期間、支払方法などを就業規則で明確にしておくことが必要、とも書いています。
労働基準法89条は、就業規則に書く事項のうち、賞与のような臨時の賃金等を「定めをする場合においては」書く事項としています。就業規則を作って届け出る義務は、常時使用する労働者の数が同条の定める人数以上の使用者にかかるので、勤め先に就業規則があるとは限りません。
使用者は、就業規則を労働者に周知させなければなりません(労働基準法106条1項)。方法は、各作業場の見やすい場所への掲示や備付け、書面の交付、記録したファイルを各作業場で常時確かめられる機器の設置のいずれかです(労働基準法施行規則52条の2)。賃金に関する事項は就業規則の本体とは別の規程に定めることもでき、その規程も就業規則の一部になります(モデル就業規則の解説)。
沖縄労働局は、事業主向けの相談事例で、業績の悪化を理由とする賞与の不支給についての質問に、「あらかじめ支給条件が明確にされていれば支払い義務が生じるが、基本的に会社の規定による」と答えています。当サイトは、勤め先の規定が明確か、有効か、自分が受け取れるか・請求できるかを判断しません。退職を申し出たことや退職予定であることを理由に賞与を減らしたり払わなかったりすることの扱いは、当サイトは一次資料で確かめておらず、書きません。自分の場合を確かめたいときは、総合労働相談コーナー(予約不要・無料)で相談できます。
就業規則に、賞与の支給対象者を一定の日(例えば、6月1日や12月1日、又は賞与支給日)に在籍した者とする規定を設けることで、期間の途中で退職等し、その日に在職しない者には支給しないこととすることも可能です。
就業規則の書き方についての説明です。勤め先の就業規則にこうした定めがあるか、その定めが自分に当てはまるかは、この解説からは分かりません。
| 項目 | 確かめること | モデル就業規則の書き方 |
|---|---|---|
| 支給対象者 | 一定の日(例えば賞与の支給日)に在籍した人を対象とする定めがあるか | 解説は、支給対象者を一定の日に在籍した者とする規定を設けることで、その日に在職しない者には支給しないこととすることも可能、と書く |
| 算定対象期間 | どの期間の勤務が賞与の対象になるか | 規程例は「算定対象期間に在籍した労働者」に支給すると書き、期間は各社が埋める様式 |
| 支給日 | いつ支給されるか | 規程例は「支給日に支給する」と書き、支給日は各社が埋める様式 |
年2回の賞与のようなものは、失業保険の日額を増やさない
失業保険(雇用保険の基本手当)の1日あたりの額は、賃金日額から計算します。雇用保険法は、労働の対償として事業主が支払う賞与も「賃金」に含めていますが(4条4項)、17条1項は、賃金日額の計算から、臨時に支払われる賃金と、3か月を超える期間ごとに支払われる賃金を除いています。
どの支払いが「3か月を超える期間ごとに支払われる賃金」に当たるかについて、厚生労働省の業務取扱要領は、同じ性格の賃金の支払回数が通常年間を通じて3回以内なら当たると判断するとしています。年2回の賞与のようなものは、受け取ってから辞めても賃金日額の計算に入らず、その分だけ基本手当の日額が増えることはありません。ハローワークも、賃金日額は原則として毎月きまって支払われた賃金から計算し、賞与等は除くと案内しています。
たとえば、毎年夏と冬に同じ性格の賞与を受けている人が、冬の賞与を受け取ってから辞めた場合、その賞与は要領が例に挙げる年2期の賞与等にあたり、賃金日額の計算に入らない扱いになります。実際に当てはまるかどうかはハローワークが判断します。
基本手当の日額の目安は、計算ツールで確かめられます。当サイトは、賞与の有無で日額がいくら違うかの試算はしません。
したがって、例えば年 2 期の賞与等は「3 か月を超える期間ごとに支払われる賃金」に該当する。
要領は、年2回の賞与のようなものを、17条1項が賃金日額から除く賃金の例として挙げています。
- 単に支払事務の便宜などのために年間の支払回数が3回以内になっているものは、「3か月を超える期間ごとに支払われる賃金」に当たりません。たとえば、通勤手当や住宅手当のように月ごとに額を計算する手当を、支払の便宜のために年3回以内にまとめて払った場合は、賃金日額の算定の基礎に入ります(要領 50453 ロ)。
- 「3か月を超える期間ごとに支払われる賃金」に当たるかどうかは、同じ性質のものごとに判断します。名称が違っても同じ性質と認められるものが年4回以上払われる場合は、賃金日額の算定の基礎に入ります(要領 50453 ハ)。
退職する月に受けた賞与の保険料は、月末に辞めるかで変わる
健康保険と厚生年金保険の資格は、退職日の翌日に失います(健康保険法36条、厚生年金保険法14条)。保険料は標準報酬月額と標準賞与額のそれぞれに率を掛けて計算し、標準賞与額は、賞与を受けた月に、その月に受けた賞与の額をもとに決まります(健康保険法45条1項・156条1項、厚生年金保険法24条の4第1項・81条3項)。
前月から引き続き加入している人が資格を失った場合、その月分の健康保険の保険料は算定しません(健康保険法156条3項)。厚生年金保険も、保険料を徴収するのは被保険者期間の各月で、被保険者期間は資格を失った月の前月までです(厚生年金保険法81条2項・19条1項)。このため、月末より前の日に辞めるとその月が資格を失った月になり、その月のうち退職日までに受けた賞与にも保険料はかかりません。日本年金機構も、資格喪失月に支払われた賞与は保険料賦課の対象とならず、退職月に支給する賞与は月末に退職する場合を除き保険料控除の対象とならない、と説明しています。月末に辞めると資格を失う日は翌月1日で、辞めた月は資格を失った月ではないので、その月に受けた賞与には保険料がかかります。
たとえば、前月から引き続き加入している人が12月10日に賞与を受け取った場合、12月31日に辞めると資格を失う日は1月1日なので、その賞与に保険料がかかります。12月30日や12月15日に辞めると12月が資格を失った月になり、その賞与にも、12月分の毎月の保険料にも、その会社の健康保険・厚生年金保険の保険料はかかりません。
保険料がかからない場合でも、健康保険ではその賞与も標準賞与額として決定され、年度の累計額に含まれる、と日本年金機構は説明しています。条文の上では、資格を失った月は厚生年金保険の被保険者期間に入らず(19条1項)、老齢厚生年金の額は被保険者期間の計算の基礎となる各月の標準報酬月額と標準賞与額をもとに計算する(43条1項)ので、その月の賞与は年金額の計算の基礎にも入りません。年金額がいくら違うかは、当サイトは計算しません。
ここでの話は、前月から引き続き加入している人が退職日までに受けた賞与についてです。入社した月に辞める場合と、退職日より後に支払われる賞与は扱いません。健康保険組合に加入している場合、日本年金機構は届出の詳細を組合に確認するよう書いており、組合が徴収する調整保険料などの資格喪失月の扱いを当サイトは確かめていないので、加入している組合に確かめてください。退職日を月末にするかその前日にするかで変わる毎月の保険料の仕組みは退職日は月末かその前日かにまとめています。
| 退職日 | 資格を失う日 | その賞与の健康保険料・厚生年金保険料 | 12月の加入先 |
|---|---|---|---|
| 12月31日(月末) | 1月1日 | かかる(12月は資格を失った月ではない) | その会社の健康保険・厚生年金保険 |
| 12月30日 | 12月31日 | かからない(12月が資格を失った月。健康保険組合の加入者は組合に確認) | 同じ月のうちに次の勤め先で加入しない限り、国民健康保険(または任意継続・家族の被扶養者)と国民年金 |
| 12月15日 | 12月16日 | かからない(同上) | 同上 |
辞めると伝える時期と、退職日の決まり方
契約期間の定めのない雇用は、退職の申入れが会社に届いた日から民法627条1項の定める期間が経過すると終了し、会社の承諾は条文上の要件になっていません。期間とその数え方は退職は何日前に伝える?にまとめています。契約期間の定めがある場合はこの定めの外にあり、期間の途中で辞めるときの扱いは別です(民法628条など)。
就業規則に退職の申出の時期の定めがあることもあります。その定めとの関係は公的資料でも書き方が分かれていて、当サイトは有効か無効かを断定しません(就業規則の予告期間との関係)。
当サイトは、賞与の支給日から逆算して「この日までに申し出ればよい」という日付を決めません。退職日を会社と合意できるかは、就業規則と労働契約によります。賞与の扱いや退職日について自分の場合を確かめたいときは、総合労働相談コーナー(予約不要・無料)や弁護士に相談できます。
住民税は、辞める月で取られ方が変わる
給与から天引き(特別徴収)されている住民税は、社会保険料とは別の決まりで、辞めた時期によって残りの税額の取られ方が変わります(地方税法321条の5第2項)。冬の賞与を受け取って12月に辞めるか、年が明けて1月に辞めるかで、扱いが分かれます。
下の表のどちらの場合も、最後の給与や退職手当等から一括で徴収されるのは、条文が定める日までに支払われるべき給与や退職手当等の中に残りの額を超えるものがある場合に限られます。どの月までが同じ扱いになるかの境目の日付と、普通徴収の納め方は退職後の住民税にまとめています。当サイトは税額を試算しません。
| 辞めた月 | 残りの住民税 | 本人の申出 |
|---|---|---|
| 12月 | 申出があれば、最後の給与や退職手当等から一括で徴収される。申出が無ければ、普通徴収(自分で納める)に切り替わる | 一括にするには要る |
| 翌年1月 | 最後の給与や退職手当等から一括で徴収される | 要らない |
12月に辞める人の年末調整
年の途中で辞めた人のうち、12月に支給されるべき給与等の支払を受けた後に辞めた人は、年の中途で行う年末調整の対象になります(国税庁 No.2665)。年末調整の対象になるのは、給与所得者の扶養控除等(異動)申告書を年末調整を行う日までに提出している一定の人です。
国税庁の挙げる対象のどれにも当たらない年の途中で辞めた人は、年内に再就職しなければ年末調整を受けられません。所得税が納め過ぎになっている場合は、翌年に確定申告をすれば還付を受けられます(国税庁 No.1910)。手続きは退職した年の確定申告にまとめています。
年内に再就職して年末まで勤めれば、新しい勤務先の年末調整の対象になります(扶養控除等(異動)申告書を提出している一定の人に限り、給与の総額が一定の額を超える人などは除かれます)。前の勤務先の給与を含める手続きは退職後の源泉徴収票にまとめています。
よくある質問
- ボーナスの支給日より前に辞めたら、ボーナスはもらえませんか?
- 勤め先の就業規則などの定めによります。厚生労働省のモデル就業規則の解説は、賞与は法律で設けることが義務付けられているものではなく、支給の対象者を支給日などの一定の日に在籍した人とする規定を設けることで、その日に在職しない人には支給しないこととすることも可能、と書いています。勤め先の定めを確かめてください。その定めが自分に当てはまるかや、請求できるかを当サイトは判断しません。自分の場合は総合労働相談コーナー(予約不要・無料)で相談できます。
- ボーナスをもらってから辞めると、失業保険の日額は増えますか?
- いいえ、年2回の賞与のようなものを受け取ってから辞めても、その分だけ日額が増えることはありません。雇用保険法17条1項は3か月を超える期間ごとに支払われる賃金を賃金日額の計算から除いていて、業務取扱要領は、同じ性格の支払いが通常年間を通じて3回以内のものがこれに当たるとしています。ただし、名称が違っても同じ性質のものが年4回以上払われる場合や、月ごとに計算する手当を支払の便宜のためにまとめて払っている場合は、賃金日額の計算に入ります。当てはまるかどうかはハローワークが判断します。
- 退職する月にもらったボーナスにも、社会保険料はかかりますか?
- 健康保険と厚生年金保険の保険料は、月末に辞めるとかかり、月末より前の日に辞めるとかかりません(前月から引き続き加入している人が、退職日までに受けた賞与の場合)。月末より前の日に辞めるとその月に資格を失い、その月分の保険料がかからないためです。ただし、同じ月のうちに次の勤め先で加入しない限り、その月は国民健康保険(または任意継続・家族の被扶養者)と国民年金の対象になります。健康保険組合に加入している人は、組合に確かめてください。
- 賞与の保険料がかからない日に辞めれば、負担は減りますか?
- 一概には言えません。月末より前の日に辞めると、その月は会社の健康保険・厚生年金保険の被保険者でなくなり、同じ月のうちに次の勤め先で加入しない限り、国民健康保険(または任意継続・家族の被扶養者)と国民年金の対象になります。どちらの負担が大きいかは、前年の所得や住んでいる市区町村、扶養家族の数などで変わります。また条文の上では、保険料がかからなかったその月の賞与は、老齢厚生年金の額の計算の基礎にも入りません。健康保険組合に加入している人は、資格を失った月の扱いを組合に確かめてください。
- 12月に冬のボーナスをもらってから辞めれば、年末調整をしてもらえますか?
- それだけでは決まりません。国税庁は、12月に支給されるべき給与等の支払を受けた後に辞めた人を、年の中途で行う年末調整の対象に挙げていますが、賞与だけを受け取り、12月に支給期の来る毎月の給与を受け取る前に辞めた場合に当たるかは、その文言からは決められません。対象は扶養控除等(異動)申告書を提出している一定の人でもあるので、勤務先か税務署に確かめてください。
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出典と更新情報
- 厚生労働省「モデル就業規則」(令和7年12月版)
- 沖縄労働局「労働相談事例 賃金・賞与・退職金Q3 賞与の支給について」
- e-Gov 法令検索 労働基準法89条(作成及び届出の義務)
- e-Gov 法令検索 労働基準法106条(法令等の周知義務)
- e-Gov 法令検索 労働基準法施行規則52条の2
- e-Gov 法令検索 雇用保険法4条(定義)
- e-Gov 法令検索 雇用保険法17条(賃金日額)
- 厚生労働省「雇用保険に関する業務取扱要領(第5~第8)」
- ハローワークインターネットサービス「基本手当について」
- e-Gov 法令検索 健康保険法36条(資格喪失の時期)
- e-Gov 法令検索 健康保険法45条(標準賞与額の決定)
- e-Gov 法令検索 健康保険法156条
- e-Gov 法令検索 厚生年金保険法14条
- e-Gov 法令検索 厚生年金保険法19条
- e-Gov 法令検索 厚生年金保険法24条の4(標準賞与額の決定)
- e-Gov 法令検索 厚生年金保険法43条(年金額)
- e-Gov 法令検索 厚生年金保険法81条
- 日本年金機構「従業員に賞与を支給したときの手続き」
- 日本年金機構「退職した従業員の保険料の徴収」
- e-Gov 法令検索 民法627条(期間の定めのない雇用の解約の申入れ)
- e-Gov 法令検索 民法628条(やむを得ない事由による雇用の解除)
- 厚生労働省「総合労働相談コーナーのご案内」
- e-Gov 法令検索 地方税法321条の5
- 国税庁 No.2665「年末調整の対象となる人」
- 国税庁 No.1910「中途退職で年末調整を受けていないとき」
最終更新: 2026年10月4日 / 次回の制度改定予定: 2027年8月1日