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たいしょくん

退職前の準備

退職日は月末かその前日か — 社会保険料が1か月分変わる仕組み

公的機関の計算例と一致することを確認済み最終更新: 本文 約3,500字

健康保険と厚生年金保険の被保険者の資格を失うのは、退職日ではなく退職日の翌日です(健康保険法36条、厚生年金保険法14条)。保険料は資格を喪失した月の前月までで算定されるため(健康保険法156条3項、厚生年金保険法19条1項)、3月31日に退職すると3月分の保険料がかかり、3月30日に退職するとかかりません。ただし会社の被保険者でなくなった月は、同じ月のうちに次の勤め先で加入しない限り、国民健康保険(または任意継続・家族の被扶養者)と国民年金の対象になります。どちらの負担が大きいかは、前年の所得や住んでいる市区町村、扶養家族の数などで変わります。

自分の条件では、いつ・いくらになるか。 退職理由・年齢・勤続年数・月収の4つで計算します。

シミュレーターで計算する

資格を失うのは退職日ではなく、その翌日

健康保険法36条は、事業所に使用されなくなった日の翌日から被保険者の資格を喪失すると定めています。厚生年金保険法14条も同じ構造で、該当するに至った日の翌日に資格を喪失します。

在職の最終日である退職日には、まだ被保険者です。3月31日に退職すれば資格喪失日は4月1日、3月30日に退職すれば資格喪失日は3月31日になります。この1日のずれが、次の節の月割りに効いてきます。

被保険者は、次の各号のいずれかに該当するに至った日の翌日(その事実があった日に更に前条に該当するに至ったときは、その日)から、被保険者の資格を喪失する。

— 健康保険法36条(e-Gov 法令検索 健康保険法36条(資格喪失の時期))

「その事業所に使用されなくなったとき」が2号に挙げられています。

保険料は資格を喪失した月の前月まで

健康保険法156条は保険料額を「各月につき」定めたうえで、3項で、前月から引き続き被保険者である者が資格を喪失した場合にはその月分の保険料を算定しないとしています。月の途中で辞めても日割りにはならず、その月がまるごと対象から外れる形です。

厚生年金保険も同じです。19条1項が被保険者期間を「資格を取得した月からその資格を喪失した月の前月まで」と定め、81条2項が保険料を「被保険者期間の計算の基礎となる各月につき」徴収するとしています。

資格を取得した月にその資格を喪失したときは、その月を1か月として被保険者期間に算入します(厚生年金保険法19条2項)。入社した月に辞めた場合は、この規定で1か月分が生じます。ただし、その月のうちに更に厚生年金保険の被保険者か、国民年金の被保険者(第2号被保険者を除く)の資格を取得したときは、この扱いになりません(同項ただし書)。

4マスの帯が上下に2本あり、「月の初めに喪失」「月の終わりに喪失」と書かれている。前の3マスは橙色で「会社の保険料を算定する月」。4マス目は白く、上の帯では左端寄り、下の帯では右端寄りに「資格喪失日」があり、どちらも「会社の保険料は算定しない」。
資格を喪失した月は、喪失日が月の初めでも終わりでも日割りにならず、その月の会社の保険料がまるごと算定されない。

前二項の規定にかかわらず、前月から引き続き被保険者である者がその資格を喪失した場合においては、その月分の保険料は、算定しない。

— 健康保険法156条3項(e-Gov 法令検索 健康保険法156条(被保険者の保険料額))

資格を喪失した月の分は、日数にかかわらず算定されません。

月末とその前日で何が変わるか

3月を例にとります。3月31日に退職すると資格喪失日は4月1日なので、喪失月は4月、その前月である3月までの保険料が算定されます。3月30日に退職すると資格喪失日は3月31日で、喪失月が3月になるため3月分は算定されません。

会社に勤めている間の保険料は、原則として事業主と被保険者が半分ずつ負担します(健康保険法161条1項・厚生年金保険法82条1項。健康保険組合の規約などにより、事業主の負担の割合が増える場合があります)。3月分がかかる場合、自己負担は原則としてその半分になります。一方、3月中に資格を喪失すると、3月中に次の勤め先で加入しない限り、3月は国民健康保険(または任意継続・家族の被扶養者)と国民年金の対象になり、こちらに事業主の負担はありません。

国民健康保険料は前年の所得と自治体で額が変わり、任意継続という選択肢もあります。どれが安いかは人によって逆転するので、退職後の健康保険の選び方で両方を計算して比べてください。

3月に退職した場合の資格喪失日と、3月分の保険料
退職日資格喪失日3月分の健康保険料・厚生年金保険料
3月31日(月末)4月1日かかる(原則として事業主と半分ずつ負担)
3月30日3月31日かからない
出典: e-Gov 法令検索 健康保険法36条(資格喪失の時期) / e-Gov 法令検索 健康保険法156条(被保険者の保険料額) / e-Gov 法令検索 厚生年金保険法19条(被保険者期間) / e-Gov 法令検索 健康保険法161条(保険料の負担及び納付義務) / e-Gov 法令検索 厚生年金保険法82条(保険料の負担及び納付義務)

賞与の保険料も同じ理屈で決まる

保険料は標準報酬月額と標準賞与額の双方に率を乗じて算定します(健康保険法156条1項、厚生年金保険法81条3項)。賞与にも保険料がかかるということです。

資格を喪失した月の分を算定しない仕組みは賞与にも及びます。前月から引き続き加入している人が月末より前の日に辞めると、その月が資格を喪失した月になり、その月のうち退職日までに受けた賞与の健康保険料・厚生年金保険料も算定されません。入社した月に辞める場合と、退職日より後に支払われる賞与は、ここでは扱いません。健康保険組合に加入している人は、資格を喪失した月の扱いを組合に確かめてください。

賞与そのものを受け取れるかどうかは別の問題です。支給日在籍要件のような取り決めは就業規則や労働契約によるもので、社会保険の規定とは関係がありません。

賞与を受け取ってから辞めるときの、就業規則・失業保険・住民税・年末調整との関係は、ボーナスをもらってから辞めるときにまとめています。

雇用保険の被保険者期間は別の数え方をする

健康保険と厚生年金が暦の月で数えるのに対して、雇用保険の被保険者期間は暦月ではありません。離職日から1か月ずつさかのぼった区間のうち、賃金の支払の基礎となった日数が11日以上あるものを1か月として数えます(雇用保険法14条1項)。

受給資格に必要な月数が足りるかどうかは、この数え方で決まります。社会保険の月割りと同じ感覚で退職日を選ぶと1か月足りないことが起こりうるので、失業保険をもらえるかは被保険者期間で決まるで数え方を確かめてください。

上下2本の帯を、縦線「離職日」が貫いている。上の帯「健康保険・厚生年金」は暦の月の境目で区切られ「暦の月で数える」。下の帯「雇用保険」は離職日を起点に区切られ、左向きの矢印に「離職日からさかのぼる」。区切りの位置は上下でずれている。
健康保険と厚生年金は暦の月の境目で区切って数える。雇用保険は離職日を起点にさかのぼって区切るので、区切りの位置がずれる。

住民税の境目は4月30日

社会保険料が月末で分かれるのに対して、住民税の一括徴収は別の日付で分かれます。地方税法321条の5第2項は、1月1日から4月30日までに退職した場合について、残りの月割額を最後の給与や退職手当等から徴収すると定めています(5月31日までに支払われる給与や退職手当等が残りの額を超える場合に限ります)。

6月1日から12月31日までの退職では本人の申出があった場合に一括徴収となり、それ以外は納税通知書での納付になります。仕組みは退職後の住民税で扱っています。

3月末に辞めるとき — 30日と31日で変わるもの・変わらないもの

3月末で辞めるときは、3月30日にするか31日にするかで、制度ごとに変わるものと変わらないものがあります。

健康保険と厚生年金の3月分の保険料は、ここまで説明したとおり31日に辞めるとかかり、30日に辞めるとかかりません。住民税は、どちらの日でも1月1日から4月30日までの退職にあたるので、残りの税額を最後の給与や退職手当等から一括で徴収する扱いは同じです(5月31日までに支払われる給与や退職手当等が残りの額を超える場合に限ります)。

国民健康保険料の軽減は、離職日の翌日の属する月から、その翌年度の末日までが対象です。3月30日に辞めると翌日の3月31日が属する年度の翌年度末まで、3月31日に辞めると翌日の4月1日が属する年度の翌年度末までになり、期間が大きく変わります。ただし軽減の対象は、特定受給資格者と、受給資格を有する特定理由離職者に限られます。正当な理由のない自己都合で辞めた人は対象外で、定年も特定受給資格者・特定理由離職者の範囲には挙げられていません。離職時に65歳以上の人も対象外です。軽減を受けるには市区町村への届出が必要で、国民健康保険に加入している間は途中で就職しても対象のままですが、会社の健康保険に加入するなどして国民健康保険を抜けると、軽減はその時点で終わります。仕組みと届出は国保の失業軽減にまとめています。

3月31日に辞めて4月1日に次の会社に入る場合は、前の会社の資格を失う日と次の会社の資格を取る日がどちらも4月1日になり、健康保険と厚生年金の資格が途切れる日はありません。年度末で有期契約が終わる場合の扱いは契約満了・派遣終了の失業保険で確かめてください。

3月30日と3月31日に退職した場合の違い
項目3月30日に退職3月31日に退職
3月分の健康保険料・厚生年金保険料かからない(3月は国民健康保険・国民年金などの対象)かかる(資格喪失日が4月1日なので、3月分まで算定)
住民税の残り最後の給与や退職手当等から一括(5月31日までに支払われるそれらが残りの額を超える場合に限る)同じ
国民健康保険料の軽減(特定受給資格者と、受給資格を有する特定理由離職者だけ。届出が必要)3月31日が属する年度の翌年度末まで(国分寺市の例で13か月分)4月1日が属する年度の翌年度末まで(国分寺市の例で24か月分)
4月1日に次の会社に入る場合3月31日の1日、健康保険と厚生年金の資格が途切れる資格の途切れる日は無い
出典: e-Gov 法令検索 健康保険法156条(被保険者の保険料額) / e-Gov 法令検索 厚生年金保険法19条(被保険者期間) / e-Gov 法令検索 地方税法321条の5(給与所得に係る特別徴収税額の納入の義務等) / e-Gov法令検索「国民健康保険法施行令」(第29条の7の2 特例対象被保険者等の給与所得を百分の三十とする算定の特例) / 国分寺市「非自発的失業者に対する国民健康保険税の軽減」 / e-Gov 法令検索 健康保険法35条(資格取得の時期) / e-Gov 法令検索 厚生年金保険法13条(資格取得の時期)

退職日の決まり方 — 無期雇用は申入れから2週間で終わる

ここまで説明したのは、退職日が決まったときに保険料がどう計算されるかです。退職日そのものの決まり方は、契約期間の定めがあるかどうかで違います。

期間の定めのない雇用について、民法627条1項は解約の申入れの日から2週間を経過することで契約が終了すると定めていて、会社の承諾は条文上の要件になっていません。契約期間の定めがある場合はこの定めの外にあり、期間の途中で辞めるときの扱いは別です(民法628条など)。就業規則に退職の申出の時期の定めがあることもありますが、その定めとの関係は公的資料でも書き方が分かれていて、本サイトは有効か無効かを断定しません。希望する日を退職日として会社と合意できるかは、就業規則と労働契約によります。

2週間の数え方、有期契約の場合、就業規則との関係は退職の申出の期限で詳しく説明しています。

次の仕事が決まっていない段階で退職日を考えるときは、辞めたあとに収入が途切れる期間と、入社日までのあいだの手続きを仕事を辞めたいけど次がないときの辞める順番で先に確かめてください。

本サイトは条文が定める数え方を説明しますが、個別の退職日の判断や会社との交渉は行いません。

よくある質問

月末に退職すると損ですか?
一概には言えません。月末に退職するとその月の健康保険料と厚生年金保険料がかかり、原則として事業主が半分を負担します。その前日に退職すると、同じ月のうちに次の勤め先で加入しない限り、その月は国民健康保険(または任意継続・家族の被扶養者)と国民年金の対象になり、こちらに事業主の負担はありません。どちらの負担が大きいかは、前年の所得や住んでいる市区町村、扶養家族の数などで変わります。
3月30日に退職すると3月分の厚生年金はどうなりますか?
3月分は徴収されません(3月より前から加入している場合)。資格喪失日が3月31日となり、保険料は資格を喪失した月の前月までで算定されるためです(健康保険法156条3項、厚生年金保険法19条1項)。20歳以上60歳未満の人は、3月中に次の勤め先で厚生年金保険に加入しない限り、3月は国民年金の対象になります。
賞与の直後に退職すると保険料はどうなりますか?
退職日が月末かどうかで変わります。前月から引き続き加入している人が月末より前の日に辞めると、その月が資格を喪失した月になり、その月のうち退職日までに受けた賞与の健康保険料・厚生年金保険料は算定されません。月末に辞めると資格喪失日は翌月1日なので、その賞与にも保険料がかかります。月末より前の日に辞めた月は、同じ月のうちに次の勤め先で加入しない限り、国民健康保険(または任意継続・家族の被扶養者)と国民年金の対象です。健康保険組合に加入している人は、組合に確かめてください。賞与そのものの支給要件は、勤め先の就業規則などの定めによります。
入社した月に退職した場合はどうなりますか?
その月が1か月として被保険者期間に算入されます(厚生年金保険法19条2項)。資格を取得した月に喪失した場合の特則で、同じ月に再び被保険者または国民年金の被保険者の資格を取得したときは除かれます。
退職日は自分で決められますか?
期間の定めのない雇用なら、民法627条1項により解約の申入れの日から2週間を経過すると雇用は終了し、会社の承諾は条文上の要件ではありません。契約期間の定めがある場合は民法628条などの別の条文によります。希望する日を退職日として会社と合意できるかは、就業規則と労働契約によります。就業規則に退職の申出の時期の定めがある場合、その定めとの関係は公的資料でも書き方が分かれていて、本サイトは有効か無効かを断定しません。
3月30日と31日で、残りの住民税の徴収の仕方は変わりますか?
変わりません。どちらの日も1月1日から4月30日までの退職にあたるので、残りの住民税は最後の給与や退職手当等から一括で徴収されます(地方税法321条の5第2項。5月31日までに支払われる給与や退職手当等が残りの額を超える場合に限ります)。

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出典と更新情報

最終更新: 2026年10月4日 / 次回の制度改定予定: 2027年8月1日

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