退職後の住民税 — 前年の所得に対する税が、収入のない年に届く
個人住民税は前年の所得に対して課され、賦課期日はその年度の初日が属する年の1月1日です(地方税法318条)。給与からの天引き(特別徴収)は6月から翌年5月までなので、年の途中で退職すると残りの払い方が変わります。1月1日から4月30日までの退職では最後の給与や退職手当等から一括徴収され、6月1日から12月31日までの退職では本人の申出があった場合に一括徴収、それ以外は市区町村から届く納税通知書で納めます(地方税法321条の5第2項)。
自分の条件では、いつ・いくらになるか。 退職理由・年齢・勤続年数・月収の4つで計算します。
シミュレーターで計算する前年の所得に対してかかる
個人住民税の賦課期日は、その年度の初日が属する年の1月1日です。1月1日時点で住んでいた市区町村が、前年の所得に応じた額を課します。東京都主税局は「所得割は、前年の所得金額に応じて課税されます。」と説明しています。
所得税との違いはここにあります。所得税はその年の所得にその年のうちから源泉徴収などで課されますが、住民税は前年の所得に対して翌年度に課されます。1年遅れで請求が来る税だということです。
退職後の住民税が重く感じられるのは、税率が上がるからではありません。収入が無くなった年に、収入があった年の分の請求が届くためです。
個人の市町村民税の賦課期日は、当該年度の初日の属する年の一月一日とする。
課税されるかどうかは1月1日時点の住所で決まります。
天引きは6月から翌年5月まで
給与所得者の住民税は、勤務先が毎月の給与から差し引いて納めます。地方税法321条の5第1項は、特別徴収税額の12分の1の額を6月から翌年5月まで毎月徴収すると定めています。東京都主税局も「給与所得者については、6月から翌年5月までの毎月の給料から特別徴収されます。」としています。
住民税の年度は6月に始まり翌年5月に終わります。年の途中で退職するというのは、この12回のどこかで天引きが止まるということです。止まったあとの分をどう払うかが、次の節の分岐になります。
退職した時期で残りの払い方が変わる
地方税法321条の5第2項は、給与の支払を受けなくなった場合について、勤務先はその翌月以降の月割額を徴収して納入する義務を負わないと定めています。ここまでが原則で、続くただし書に2つの例外が置かれています。
1つ目は6月1日から12月31日までに退職した場合で、本人から申出があれば残りを一括徴収します。2つ目は翌年1月1日から4月30日までに退職した場合で、こちらは申出の有無にかかわらず一括徴収です。
ただし一括徴収されるのは「支払われるべき給与又は退職手当等で当該月割額の全額に相当する金額を超えるものがあるとき」に限られます。最後の給与や退職金が残額に満たなければ、そこから全額を取ることはできません。
5月に退職した場合は一括徴収の対象になりません。住民税の年度が5月で終わるため、その年度最後の月割額を通常どおり徴収して完結します。
前項の特別徴収義務者は、前条の規定によりその者が徴収すべき給与所得に係る特別徴収税額に係る個人の市町村民税の納税義務者が当該特別徴収義務者から給与の支払を受けないこととなつた場合には、その事由が発生した日の属する月の翌月以降の月割額(略)は、これを徴収して納入する義務を負わない。
括弧書きを「(略)」に畳んでいます。この本文に続くただし書が一括徴収を定めています。
| 退職した時期 | 残りの住民税の扱い | 根拠 |
|---|---|---|
| 1月1日〜4月30日 | 申出の有無にかかわらず、最後の給与・退職手当等から一括徴収 | 地方税法321条の5第2項ただし書 |
| 6月1日〜12月31日 | 原則は納税通知書で納付。本人の申出があれば一括徴収 | 同上 |
| 5月中 | その年度最後の月割額を通常どおり徴収して完結 | 地方税法321条の5第1項 |
納税通知書で納めるときの納期
天引きができなくなった残りは、市区町村から届く納税通知書で納めます。地方税法320条は普通徴収の納期を「六月、八月、十月及び一月中」と定めていて、具体的な日は市町村の条例によります。
東京都主税局も「その他の方については、区市町村から送付される納税通知書で、年4回に分けて納めます(普通徴収)」「退職したことにより特別徴収ができなくなった残りの住民税は、区市町村から送られてくる納税通知書により納めます。」と説明しています。
同条にはただし書があり、特別の事情がある場合には異なる納期を定めることができるとされています。回数と日は住んでいる市区町村の案内で確かめてください。
- 納期は6月・8月・10月・翌年1月の4回が原則
- 具体的な納期の日は市町村の条例で定める
- 特別の事情がある場合は異なる納期を定めることができる
失業保険は住民税の計算に入らない
雇用保険法12条は、失業等給付として支給を受けた金銭を標準として租税その他の公課を課することができないと定めています。基本手当は所得に算入されないので、住民税の所得割の計算にも入りません。
収入が失業保険だけだった年は、その翌年度の住民税で所得割の対象になる所得がないことになります。退職の翌年度は前年に働いていた分で高く、翌々年度に下がるという順序です。
所得税の側の精算については退職した年の確定申告で扱っています。確定申告の内容は市区町村へ送られ、住民税の計算にも使われます。
減免の制度は自治体ごとに違う
住民税の減免は市町村の条例で定められるため、要件も割合も全国一律ではありません。横浜市のように減免の基準を公表している自治体があり、退職や所得の減少を理由にした区分を設けている例があります。
非自発的失業者に対する国民健康保険料の軽減は、住民税の減免とは別の制度です。こちらは離職理由コードで対象が決まるので、離職理由コード一覧を確かめてください。
住民税を含めた退職後の支出全体を下げる順番は退職後の固定費を下げる順番にまとめてあります。
額と期日を決めるのは市区町村
税額の計算も、納期の日も、減免の可否も、決めるのは住んでいる市区町村です。本サイトが説明できるのは地方税法が定める枠組みまでで、個別の税額や減免の判断はしません。
納税通知書が届いたら、記載された納期と金額を確認してください。払えない事情があるときは、期限を過ぎる前に市区町村の窓口へ相談することになります。
よくある質問
- 退職後に住民税の納税通知書が届いたのはなぜですか?
- 給与からの天引きができなくなった残りを、市区町村が直接請求するためです。住民税は前年の所得に対して課され、天引きは6月から翌年5月まで行われます。退職でその途中が止まるため、残りは納税通知書で納めます。
- 退職金から住民税がまとめて引かれたのはなぜですか?
- 1月1日から4月30日までの退職では、残りの月割額を一括徴収することが定められているためです(地方税法321条の5第2項ただし書)。支払われるべき給与や退職手当等が残額を超えるときに限られます。
- 失業保険をもらうと住民税は上がりますか?
- 上がりません。雇用保険法12条により失業等給付には租税を課せないため、所得に算入されません。収入が失業保険だけだった年は、その翌年度の住民税で所得割の対象になる所得が無いことになります。
- 住民税はいつになったら下がりますか?
- 退職した翌々年度です。住民税は前年の所得に対して課されるため、退職した年の所得が反映されるのはその翌年度、収入が無かった年が反映されるのはさらに次の年度になります。
- 払えないときはどうすればいいですか?
- 市区町村の窓口へ相談することになります。自治体によっては減免や徴収猶予の制度がありますが、要件も割合も条例で定められているため全国一律ではありません。期限を過ぎる前に相談してください。
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出典と更新情報
- e-Gov 法令検索 地方税法318条(個人の市町村民税の賦課期日)
- e-Gov 法令検索 地方税法321条の5(給与所得に係る特別徴収税額の納入の義務等)
- e-Gov 法令検索 地方税法320条(普通徴収に係る個人の市町村民税の納期)
- 東京都主税局「個人住民税」(年の途中で退職したとき)
- e-Gov 法令検索 雇用保険法12条(公課の禁止)
- 横浜市「個人市民税・県民税の減免」
データ最終確認: 2026年9月7日 / 次回の制度改定予定: 2027年8月1日