退職後のお金
退職後の固定費を下げる順番と、公的な減免制度
退職後の固定費削減は、効果額の大きい順に手をつけるのが合理的です。まず確認すべきは公的な減免で、会社都合などの離職なら国民健康保険料の算定で前年の給与所得を30%とみなす軽減があり、国民年金は失業を理由にすれば前年所得にかかわらず免除を申請できます。通信費の見直しはその次です。家計調査によると携帯電話通信料の月平均は二人以上世帯で9,068円、単身世帯で4,483円で、格安SIMへの乗り換えで月数千円の差が生まれます。
自分の条件では、いつ・いくらになるか。 退職理由・年齢・勤続年数・月収の4つで計算します。
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手をつける順番は、効果額の大きい順
退職後の節約というと通信費やサブスクの見直しが語られがちですが、順番が逆です。退職直後の家計を最も圧迫するのは、収入がない状態で前年の所得に対して課される社会保険料と住民税です。ここには申請すれば効く公的な減免があり、通信費の削減より桁が大きくなることがあります。
しかもこれらの減免は自動では適用されません。いずれも本人の申請が必要で、期限を過ぎると使えなくなるものもあります。通信キャリアの乗り換えはいつでもできますが、減免の申請にはできる時期があります。先にこちらを片づけるべき理由はそこにあります。

国民健康保険料は、離職理由によって3割で計算される
倒産や解雇などによる離職(特定受給資格者)と、契約更新がなかった場合などの特定理由離職者は、国民健康保険料の算定で前年の給与所得を30%とみなす軽減を受けられます。前年の給与が高かった人ほど効果が大きくなります。
対象かどうかは、雇用保険受給資格者証に記載された離職理由コードで決まります。11、12、21、22、23、31、32、33、34のいずれかであれば対象です。31から34は「正当な理由のある自己都合退職」で、自己都合であっても対象になる場合があることが見落とされがちです。
軽減される期間は、保険料については離職日の翌日が属する月から翌年度3月分まで、高額療養費などの自己負担限度額については離職日の翌日が属する月の翌月から翌々年度7月までです。最長で2年度分に及びます。
申請時の注意として、横浜市は必要書類について「原本をお持ちください。離職票や退職証明書では受付できません」と明記しています。必要なのは雇用保険受給資格者証(またはマイナンバーカードで失業認定をした場合は雇用保険受給資格通知の全件版)です。離職票だけを持って窓口へ行っても手続きできません。
対象になる離職理由コード、軽減の期間、65歳以上の扱いは国民健康保険料の軽減で詳しく説明しています。
- 対象: 離職日時点で65歳未満で、離職理由コードが11・12・21・22・23・31・32・33・34のいずれか
- 内容: 前年の給与所得を30/100とみなして保険料を算定
- 期間: 離職日の翌日が属する月から翌年度3月分まで
- 手続き: 市区町村の窓口へ雇用保険受給資格者証の原本と本人確認書類を持参
国民年金は「前年所得にかかわらず」免除を申請できる
国民年金保険料の免除は通常、本人・配偶者・世帯主の前年所得で判定されます。しかし失業には特例があり、日本年金機構は「失業・倒産・事業の廃止などの事実を確認できたときは、失業等した方の前年所得にかかわらず、免除・納付猶予を受けられる特例があります」と説明しています。前年に十分な給与があっても、失業を理由にすれば本人の所得を審査から外せます。
第1号への切替えの期限、窓口と持ち物、配偶者の届出は退職後の国民年金にまとめています。
ここで重要なのが、免除と納付猶予の違いです。全額免除を受けた期間は、保険料を全額納付した場合の年金額の2分の1が反映されます。一方で納付猶予は、受給資格期間にはカウントされるものの年金額には一切反映されません。同じ「払わなくてよい」でも将来の年金額への影響が違います。
金額で見ると差は明確です。日本年金機構が示す目安では、40年納付した場合の老齢基礎年金が年847,300円であるのに対し、40年すべて全額免除だった場合は年423,650円です。納付猶予でこの期間を埋めた場合、その期間分は年金額に加算されません。
免除を受けた期間の保険料は、10年以内であれば追納して年金額を戻せます。ただし3年度目以降の追納には当時の保険料額に加算額が上乗せされます。また追納の納付方法は納付書による現金納付か電子納付のみで、口座振替やクレジットカードは使えません。
国民年金の免除・猶予が年金額に反映される割合
- 全額免除
- 2分の1受給資格期間にも算入される
- 4分の3免除
- 8分の5令和8年度の納付額 4,480円
- 半額免除
- 8分の6令和8年度の納付額 8,960円
- 4分の1免除
- 8分の7令和8年度の納付額 13,440円
- 納付猶予
- 反映されない受給資格期間には算入されるが年金額は増えない
- 40年納付した場合の老齢基礎年金
- 年847,300円40年すべて全額免除の場合は年423,650円
出典: 日本年金機構「国民年金保険料の免除・納付猶予制度」 / 最終更新: 2026年9月26日
住民税の減免は自治体ごとに違い、自己都合が外れることがある
住民税にも減免の制度がありますが、これは地方税法にもとづき各自治体が条例で定めるものです。要件も減免率も申請期限も自治体によって異なり、「失業したら住民税が減免される」と一般化することはできません。
横浜市を例にとると、対象となるのは「1ヶ月以上失職等によって所得がない場合」などですが、同市は失業等の定義について「会社倒産や人員整理による解雇、疾病による失業等、労働の意思及び能力を有するにもかかわらず職業に就くことができない状態にあることをいい、自己都合や期間満了による退職を除きます」としています。自己都合退職は明示的に対象外です。
申請期限にも注意が必要です。横浜市は「納期限を過ぎた税額及び納付済の税額については、原則減免等はできません」としています。納付書が届いてから調べ始めると間に合わないことがあります。お住まいの自治体の要件を、退職を決めた段階で確認してください。
通信費は、家計調査で見ると月9,068円
公的な減免を確認したら、次が固定費です。総務省統計局の家計調査(2025年)によると、携帯電話通信料の月平均は二人以上世帯で9,068円、単身世帯で4,483円です。
ここで数字の読み方に注意が必要です。同じ調査の「交通・通信」は月45,730円ですが、これには自動車関係費や交通費が含まれており、通信だけを取り出すと11,672円、さらにそのうち携帯電話通信料が9,068円という構造です。また二人以上世帯の数値は世帯人員2.87人の合計であり、1人あたりの額ではありません。
格安SIMの水準と比べると差が見えます。音声通話付きで3GB程度なら、mineoのデュアルタイプ3GBが月1,298円、IIJmioの5ギガ音声SIMが月950円、LINEMOのベストプランが3GBまで月990円です。大容量ではahamoが30GB 月額2,970円(税込)、LINEMOベストプランVが30GBに5分通話定額付きで月2,970円です。いずれも取得日時点の公式表示で、キャンペーンにより変動します。
通信費の月平均(家計調査 2025年)
- 携帯電話通信料(二人以上世帯)
- 9,068円世帯人員2.87人の合計
- 携帯電話通信料(単身世帯)
- 4,483円
- 通信費の合計(二人以上世帯)
- 11,672円郵便・固定電話等を含む
- 通信費の合計(単身世帯)
- 6,415円
- 参考: 交通・通信(二人以上世帯)
- 45,730円自動車関係費・交通費を含むため通信費ではない
出典: 総務省統計局「家計調査年報(家計収支編)2025年(令和7年)」 / 最終更新: 2026年9月26日
使わない月がある人は、料金の形そのものを変えられる
退職後は在宅時間が増え、自宅のWi-Fiを使う割合が上がるため、モバイルデータの消費量が在職中より減ることがあります。この場合、容量を減らすより料金の形を変えるほうが効きます。
povo2.0は基本料が0円で、必要なときにデータを購入する方式です。30日3GBが990円、30日30GBが2,780円のほか、365日60GBが13,200円(月あたり1,100円相当)といった長期のトッピングもあります。使わない月は購入しないという運用ができます。
ただしこの運用には条件があります。povoは、有料トッピングの購入がない期間が180日続くと順次利用停止となり、その後30日間も購入がなければ契約が解除されると規約に定めています(期間内の従量料金の合計が税込660円を超える場合などを除く)。完全に0円のまま維持し続けられるわけではありません。
繰り越しを重視するなら別の選択肢もあります。IIJmioは余ったデータを翌月へ繰り越せます。y.u mobileはギガの繰り越しに有効期限がなく、ストック上限100GBまで貯められます。
電気の切り替えは無料だが、解約金は別
電力の小売は2016年4月1日に全面自由化され、家庭でも電力会社と料金メニューを自由に選べます。資源エネルギー庁は「今ある送配電網を使うので新たに電線を引くことにはなりません。また、電気そのものの品質や信頼性(停電の可能性など)は、どの会社から電気を買っても同じです」と説明しています。
手続きは切り替え先へ申し込むだけで、現在契約している電力会社への解約手続きは切り替え先が代行できます。必要な期間はスマートメーターへの交換工事が必要な場合で約2週間、不要な場合で約4日です。
費用については正確に理解しておく必要があります。無料と明言されているのはスマートメーターへの交換で、資源エネルギー庁は「スマートメーターへの交換には、原則費用はかかりません」としています。一方で現在の契約については「料金プランによっては、解約金が発生することがありますので、契約締結前によく御確認いただください」とされています。切り替え自体が完全に無料とは限りません。
NHK受信料は、失業だけでは免除されない
固定費の話でしばしば期待されるのがNHK受信料ですが、免除基準に「失業」「離職」「収入減少」は含まれていません。全額免除の対象は生活保護などの公的扶助受給者、市町村民税非課税の障害者世帯、社会福祉施設等入所者、一定の要件を満たす別住居の学生です。半額免除は視覚・聴覚障害者や重度の障害者が世帯主で受信契約者である場合です。
失業した結果として生活保護を受給するに至った場合や、障害者手帳を持つ世帯で世帯全員が市町村民税非課税になった場合には、それぞれの事由で対象になり得ます。ただし失業そのものを理由とする免除の制度はありません。免除を受ける場合はいずれも申請手続きが必要です。
保険料は金額が大きいぶん、見直しの効果も大きい
生命保険文化センターの2024年度調査によると、2人以上世帯の生命保険(個人年金保険を含む)の年間払込保険料は平均35.3万円です。月あたりに直すと約2.9万円で、通信費より大きい水準です。
ただし保険は解約すると同じ条件で入り直せないことがあり、健康状態によっては加入自体ができなくなります。通信キャリアの乗り換えのように後から戻せる性質のものではないため、金額の大きさだけを見て判断しないでください。退職に伴って必要な保障が変わる部分(たとえば会社の団体保険がなくなる分)を確認したうえで検討するのが順当です。
よくある質問
- 退職後に最初に見直すべき固定費は何ですか?
- 公的な減免制度です。国民健康保険料の3割軽減と国民年金の失業特例免除は、通信費などの見直しより効果額の桁が大きくなります。申請しなければ適用されないため、まずここから確認してください。
- 国民年金の免除は前年の所得が高くても申請できますか?
- できます。失業を理由とする特例免除では、退職した本人の前年所得を除いて審査されます。ただし配偶者と世帯主の所得は審査の対象に残ります。
- 住民税も減免してもらえますか?
- 自治体ごとに条例で定められており、内容が異なります。自己都合退職が対象から外れている自治体もあるため、お住まいの市区町村の窓口で確認してください。
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出典と更新情報
- e-Gov法令検索「国民健康保険法施行令」(第29条の7の2 特例対象被保険者等の給与所得を百分の三十とする算定の特例)
- 総務省統計局「家計調査年報(家計収支編)2025年(令和7年)」
- 総務省「電気通信サービスに係る内外価格差調査」(令和7年度)
- 日本年金機構「国民年金保険料の免除・納付猶予制度」
- 横浜市「国民健康保険料について(非自発的失業による負担軽減措置)」
- 横浜市「個人市民税・県民税の減免」
- 資源エネルギー庁「電力の小売全面自由化」
- NHK「受信料の免除基準」
最終更新: 2026年9月26日 / 次回の制度改定予定: 2027年8月1日