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たいしょくん

給付制限

配偶者の転勤と失業保険 — 給付制限がつかない2つの条件

公的機関の計算例と一致することを確認済み最終更新: 本文 約2,800字

配偶者が、同居している住所から通勤が困難な事業所への転勤・出向を会社から命じられたり、通勤が不可能か困難な事業所に再就職したりして住居を移すことになり、同居を続けるために自分も住所を移すことになって、移転後の住所から今の勤め先へ通うのが不可能か困難になるため辞めた場合は、ハローワークに正当な理由があると認められれば特定理由離職者として扱われ、失業保険(基本手当)に離職理由による給付制限がつきません。基準は厚生労働省の業務取扱要領にあり、通勤困難の目安は往復おおむね4時間以上などです。受給資格は離職前1年間に被保険者期間6か月以上でも足り、所定給付日数は、就職困難者にあたる場合を除き自己都合と同じ一般の表です。

自分の条件では、いつ・いくらになるか。 退職理由・年齢・勤続年数・月収の4つで計算します。

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配偶者の転勤で辞めても、給付制限がつかないことがある

雇用保険法33条1項は、離職理由による給付制限の対象を「自己の責めに帰すべき重大な理由によつて解雇され、又は正当な理由がなく自己の都合によつて退職した場合」としています。自分から辞めた場合でも、正当な理由があれば、この給付制限はつきません。

何が正当な理由にあたるかは、厚生労働省の業務取扱要領 52203 が認定の基準として列挙しています。その中に、通勤が不可能または困難になって辞めた場合の理由として「配偶者の事業主の命による転勤若しくは出向又は配偶者の再就職に伴う別居の回避」が挙げられています。

ハローワークの「特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲の概要」は、特定理由離職者の範囲に「以下の正当な理由のある自己都合により離職した者」を挙げ、その1つにこの理由を含めています。この理由で辞めた人は、正当な理由があると認められれば特定理由離職者にあたり、その判断は給付制限の「正当な理由」と同じ基準で行うとされています。なお、正当な理由のある自己都合でも、倒産・解雇などの特定受給資格者(雇用保険法23条2項)にあたる人は、特定理由離職者には含まれません。自己都合と会社都合でほかに何が変わるかは自己都合と会社都合の違いにまとめています。

ここにいう「正当な理由」とは、被保険者の状況(健康状態、家庭の事情等)、事業所の状況(労働条件、雇用管理の状況、経営状況等)その他からみて、その退職が真にやむを得ないものであることが客観的に認められる場合をいうのであって、被保険者の主観的判断は考慮されない。

— 雇用保険に関する業務取扱要領 52203(3)(厚生労働省「雇用保険に関する業務取扱要領(一般被保険者に対する求職者給付・第9〜第12)」(令和8年8月版))

自分ではやむを得なかったと思っていても、客観的に認められるかどうかで決まります。判断するのはハローワークです。

当てはまるには、2つの条件がそろうこと

要領は、配偶者の転勤・出向・再就職による場合を、次の2つの条件の両方にあたるときに適用するとしています。1つは配偶者の側の事情、もう1つは自分の側の事情です。

具体的な流れで考えると分かりやすくなります。たとえば、東京で働く人の配偶者が、会社から大阪の事業所への転勤を命じられたとします。一緒に暮らし続けるために大阪へ住所を移すことになると、東京の勤め先へ通うのは難しくなります。この例でいえば、配偶者の転勤が同居している住所から通勤が困難な事業所へのものかが1つめの条件、同居を続けるために大阪へ住所を移すことになり、移転後の住所から東京の勤め先へ通うのが不可能か困難になって辞めたかが2つめの条件で問われる、という形です。実際に当てはまるかはハローワークが判断します。

上下2段の図で、間を細い罫が区切る。上段の見出しは「配偶者の側」で、左の家「今の住まい」から右の建物「配偶者の新しい勤め先」へ水平の破線が伸び、破線の上に「通勤が困難」とある。下段の見出しは「自分の側」で、左の家「移転後の住まい」から右の建物「自分の勤め先」へ同じ長さの破線が伸び、破線の上に「通勤が不可能・困難」とある。
当てはまるには、配偶者の側で今の住まいから配偶者の新しい勤め先へ通うのが困難になることと、自分の側で移転後の住まいから自分の勤め先へ通うのが不可能か困難になることの、両方がそろう必要がある。

(と)は、被保険者の配偶者がその事業主から通勤が不可能又は困難な事業所へ転勤又は出向を命ぜられ、或いは再就職のために、当該配偶者が住居を移転することとなった場合において、被保険者本人が当該配偶者と同居を続けるために退職した場合であり、次のいずれにも該当する場合に適用する。

— 雇用保険に関する業務取扱要領 52203 レ(チ)(厚生労働省「雇用保険に関する業務取扱要領(一般被保険者に対する求職者給付・第9〜第12)」(令和8年8月版))

「(と)」は、配偶者の転勤・出向・再就職に伴う別居の回避のことです。続く2つの条件を下の表にまとめています。

配偶者の転勤・出向・再就職で辞めたときに求められる2つの条件
条件要領に書かれている内容
1. 配偶者の側配偶者が、同居している住所から通勤が困難な事業所への転勤または出向を、会社から命じられたこと。または、同居している住所から通勤が不可能か困難な事業所に再就職したこと。
2. 自分の側1に伴って、配偶者と同居を続けるために住所を移すことになり、その結果、移転後の住所から今の勤め先へ通うのが不可能か困難になることで辞めたこと。
出典: 厚生労働省「雇用保険に関する業務取扱要領(一般被保険者に対する求職者給付・第9〜第12)」(令和8年8月版)

「通勤が困難」の目安は往復おおむね4時間

要領は、ここでいう「通勤困難」を次の2つのどちらかにあたる場合と定めています。

1つめの目安は時間です。移転後の住所から今の勤め先まで、通常の交通機関を使う、または自動車・自転車を使うなど、通常の方法で通勤した場合の往復の所要時間を、乗り継ぎ時間も含めて考えます。2つめは、通勤に交通機関を使うべき時間帯の便が悪く、通勤に著しい障害がある場合で、往復の時間が4時間に届かなくても、こちらにあたることがあります。

「おおむね」とあるとおり、示されているのは目安の時間で、条文の数字ではありません。通勤困難にあたるかどうかは、ハローワークが事情を確かめて判断します。当サイトは、個々の通勤が通勤困難にあたるかを判断しません。

  • 通常の交通機関、または自動車・自転車など通常の方法で通勤する往復の所要時間(乗り継ぎ時間を含む)が、おおむね4時間以上のとき
  • 通勤に交通機関を使うべき時間帯の便が悪く、通勤に著しい障害があるとき

結婚や自分の転勤で辞めたときとの違い

要領は、通勤が不可能または困難になって辞めた場合の理由として、配偶者の転勤のほかにも、結婚に伴う住所の変更や、自分が会社から転勤・出向を命じられ、配偶者や扶養すべき同居の親族と別居することを余儀なくされた場合などを挙げています。それぞれに書かれている条件は同じではありません。

結婚に伴う住所の変更には、退職から住所の移転までの間がおおむね1か月以内であることという時期の条件があります(事業主の都合で退職日を年末・年度末などにした場合を除く)。この時期の条件は結婚の場合について書かれたもので、配偶者の転勤の場合の2つの条件には含まれていません。

要領は、ここでいう「配偶者」に、婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にあった人を含むとしています。また「扶養すべき親族」は、直系血族、兄弟姉妹と、家庭裁判所が扶養の義務を負わせた3親等内の親族をいうとしています(民法877条)。

通勤が不可能・困難になって辞めた場合の主な理由と、要領に書かれている条件
辞めた理由要領の項目書かれている条件
配偶者の転勤・出向・再就職52203 レ(と)上の2つの条件の両方
結婚に伴う住所の変更52203 レ(い)結婚に伴う住所の移転のために通勤が不可能・困難になり、勤務の継続が客観的に不可能・困難になって辞めたこと。退職から住所の移転までの間がおおむね1か月以内であること(事業主の都合で退職日を年末・年度末などにした場合を除く)
自分の転勤・出向で配偶者や扶養すべき同居の親族と別居することになった52203 レ(へ)通勤が不可能・困難な事業所への転勤・出向を命じられ、配偶者や扶養すべき同居の親族と別居することを余儀なくされたこと
配偶者や扶養すべき親族との別居を続けることが困難52203 タ別居を続けることが、家庭生活の上からも、経済的事情等からも困難となったため、同居するために通勤が不可能・困難な地へ住所を移して辞めたこと
出典: 厚生労働省「雇用保険に関する業務取扱要領(一般被保険者に対する求職者給付・第9〜第12)」(令和8年8月版) / ハローワークインターネットサービス「特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲の概要」

認められると変わること

配偶者の転勤・出向・再就職に伴う別居の回避で、正当な理由のある自己都合退職と認められると、正当な理由のない自己都合退職と比べて、離職理由による給付制限・受給資格の要件・国民健康保険料の軽減が変わります。所定給付日数は、就職困難者にあたる場合を除き、どちらも一般の離職者の表で変わりません(就職困難者にあたるかはハローワークが判断します)。

受給資格の要件の数え方は受給資格と被保険者期間の数え方、国民健康保険料の軽減と届出は国保の失業軽減にまとめています。

配偶者の転勤・出向・再就職で辞めた場合に、正当な理由の有無で変わること
項目正当な理由のない自己都合正当な理由があると認められた場合(特定理由離職者)
離職理由による給付制限原則1か月(離職日が2025年4月1日以降の場合)なし
受給資格の要件離職前2年間に被保険者期間12か月以上離職前1年間に被保険者期間6か月以上(2年間に12か月以上でもよい)
所定給付日数一般の離職者の表(90〜150日。就職困難者は別の表)同じ表
国民健康保険料の軽減対象外対象(国民健康保険の被保険者で、基本手当の受給資格がある人に限る。離職時に65歳以上の人を除く。市区町村への届出が必要)
出典: e-Gov 法令検索 雇用保険法33条(給付制限) / e-Gov 法令検索 雇用保険法13条(基本手当の受給資格) / e-Gov 法令検索 雇用保険法22条(所定給付日数) / ハローワークインターネットサービス「基本手当の所定給付日数」 / e-Gov法令検索「国民健康保険法施行令」(第29条の7の2 特例対象被保険者等の給与所得を百分の三十とする算定の特例)

離職票の離職理由と、ハローワークでの手続き

離職票-2の離職理由の欄には、まず会社が離職理由を記入します。会社の記入と自分の事情が違うと考えるときは、離職者の記入欄で自分の主張する理由を選び、離職に至った原因と経緯などの具体的な事情を書きます。

厚生労働省のリーフレットは、個人的な事情による離職について「退職願(写)等その内容が確認できる資料」を持参するよう案内し、可能であれば掲載している以外の資料も持参するよう求めています。事情を説明できる資料は、手元に残しておくと窓口で説明する材料になります。

離職理由は、会社と本人の主張を資料で確かめたうえでハローワークが判定します。判定に納得できないときの手続きは離職理由に納得できないときにまとめています。

離職票-2を受け取ってからハローワークへ行くまで

  1. 記載内容を確認する

    会社が記入した離職理由と、具体的事情の欄の内容を確かめます。

  2. 離職理由の欄に記入する

    会社の記入に異議があれば、自分の主張する理由を選んで、配偶者の転勤と住所の移転の経緯などの具体的な事情を書きます。

  3. 資料をそろえてハローワークへ行く住所地を管轄するハローワーク

    記入した内容を確認できる資料があれば、離職票と一緒に持参します。

出典: 厚生労働省「離職された方へ — 離職票-2の離職理由欄等の記載方法について」

配偶者の扶養に入るかどうか

配偶者の転勤に合わせて辞めると、配偶者の健康保険の被扶養者になるかどうかも考えることになります。失業保険(基本手当)を受け取る期間と被扶養者の収入の基準の関係は扶養と失業保険にまとめています。

自分の離職が正当な理由のある自己都合にあたるか、会社の記入が事実と違うときにどう申し出ればよいかといった個別の判断は、住所地のハローワークか社会保険労務士に相談してください。

よくある質問

配偶者の転勤についていくために辞めれば、必ず給付制限はつきませんか?
いいえ、必ずではありません。業務取扱要領は、配偶者が同居している住所から通勤が困難な事業所への転勤・出向を命じられたこと(または同じ住所から通勤が不可能か困難な事業所に再就職したこと)と、それに伴って同居を続けるために自分も住所を移すことになり、移転後の住所から勤め先へ通うのが不可能か困難になるため辞めたことの両方を求めています。当てはまるかどうかはハローワークが判断します。
通勤が往復4時間に少し届かない場合はどうなりますか?
業務取扱要領は通勤困難の目安を往復おおむね4時間以上としたうえで、通勤に交通機関を使うべき時間帯の便が悪く、通勤に著しい障害がある場合も通勤困難にあたるとしています。通勤困難にあたるかどうかはハローワークが事情を確かめて判断し、当サイトは個々の通勤について判断しません。
結婚して引っ越すために辞めた場合も同じですか?
結婚に伴う住所の変更も、通勤が不可能か困難になって辞めた場合の理由に挙げられています。ただし要領は、退職から住所の移転までの間がおおむね1か月以内であることを求めています(事業主の都合で退職日を年末・年度末などにした場合を除く)。
事実婚でも対象になりますか?
業務取扱要領は、ここでいう配偶者に、婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にあった人を含むとしています。
受給資格に必要な被保険者期間はどれだけですか?
正当な理由のある自己都合退職と認められた場合は、離職前1年間に被保険者期間が6か月以上あれば受給資格を満たします(雇用保険法13条2項。離職前2年間に12か月以上でも満たします)。認められない場合は、離職前2年間に12か月以上が必要です。

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最終更新: 2026年10月3日 / 次回の制度改定予定: 2027年8月1日

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