失業保険を受け取ると家族の扶養から外れるか — 分かれ目は日額3,611円
家族の健康保険の被扶養者でいられるかどうかは、失業等給付を受けている間は年間の金額ではなく基本手当の日額で見ます。日本年金機構は雇用保険等の受給者について「日額3,611円以下であれば要件を満たします」としています。年間収入130万円未満という基準は、過去の収入ではなく認定の時点から先の見込み額に対するものなので、退職前の年収がいくらだったかは判定に使いません。認定を行うのは加入している健康保険の保険者です。
自分の条件では、いつ・いくらになるか。 退職理由・年齢・勤続年数・月収の4つで計算します。
シミュレーターで計算する判定に使うのは年収ではなく基本手当の日額
健康保険法3条7項は被扶養者を「主としてその被保険者により生計を維持するもの」と定めています。条文にあるのはこの一句だけで、130万円という金額も日額3,611円という数字も書かれていません。金額の基準は、この「生計を維持する」を行政が運用するために示している目安です。
日本年金機構が公表している目安は、年間収入130万円未満(60歳以上または障害者は180万円未満)です。給与であれば月額108,333円以下、雇用保険等の受給者であれば日額3,611円以下が、この130万円を日割りにした基準にあたります。
失業保険を受け取る人に効いてくるのは3つ目の基準です。基本手当日額が3,611円を超えると、受け取っている間は目安を満たさないことになります。
被保険者(日雇特例被保険者であった者を含む。以下この項において同じ。)の直系尊属、配偶者(届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む。以下この項において同じ。)、子、孫及び兄弟姉妹であって、主としてその被保険者により生計を維持するもの
配偶者・子・親などについては、条文上「同一の世帯に属し」という要件は付いていません。
- 収入には雇用保険の失業等給付・公的年金・傷病手当金・出産手当金を含める
- 同一世帯の場合は、被保険者の年間収入の2分の1未満であること
- 別居の場合は、被保険者からの仕送り額未満であること
| 判定するもの | 目安の額(円) | 130万円との関係 |
|---|---|---|
| 年間収入 | 1,300,000未満 | 60歳以上または障害者は1,800,000未満 |
| 給与等の月額 | 108,333以下 | 1,300,000 ÷ 12 |
| 雇用保険等の受給者の日額 | 3,611以下 | 1,300,000 ÷ 360 |
「去年いくら稼いだか」は判定に使わない
被扶養者の認定でいう年間収入は、過ぎた1年の実績ではなくこれから先の見込みです。日本年金機構は「年間収入とは、過去の収入のことではなく、被扶養者に該当する時点および認定された日以降の年間の見込み収入額のことをいいます」と説明しています。
退職前の年収が高かったこと自体は要件に影響しません。逆に、基本手当日額が3,611円を超える人は、受給が始まった時点で見込みが目安を超えます。
年間の受給総額が130万円に届かない場合でも、日額で見る扱いは変わりません。所定給付日数が90日であれば総額は基本手当日額の90倍にとどまりますが、基準は日額のほうに置かれています。
月収いくらで日額3,611円に届くか
基本手当日額は、離職前6か月の賃金合計を180で割った賃金日額に給付率をかけて求めます。賃金日額が低い区間の給付率は80%で、この区間では離職時の年齢によって率が変わりません。
毎月の賃金が一定だったとすれば賃金日額は月収の30分の1になるので、月収から基本手当日額を概算できます。次の表は、その概算と日額3,611円という目安を並べたものです。
境目は月収13万円台の後半にあります。表の数値は本サイトの計算エンジンが厚生労働省の計算式から算出したもので、実際の賃金日額は離職票の賃金額をもとにハローワークが算定します。
年齢帯別の上限や給付率が下がる区間まで含めた一覧は基本手当日額の早見表にあります。賞与や3か月を超える期間ごとに支払われる賃金は、賃金日額の計算に含めません。
| 離職前の月収(円) | 賃金日額(円) | 基本手当日額(円) | 日額3,611円との比較 |
|---|---|---|---|
| 120,000 | 4,000 | 3,200 | 基準以下 |
| 130,000 | 4,333 | 3,466 | 基準以下 |
| 135,000 | 4,500 | 3,600 | 基準以下 |
| 140,000 | 4,666 | 3,733 | 基準を超える |
| 150,000 | 5,000 | 4,000 | 基準を超える |
| 160,000 | 5,333 | 4,266 | 基準を超える |
扶養の目安と、月収別の基本手当日額
- 扶養の目安(日額)3,611円
- 月収135,000円3,600円
- 月収140,000円3,733円
- 月収160,000円4,266円
計算方法と根拠
賃金日額を出す
離職前6か月の賃金合計 ÷ 180
賞与と3か月を超える期間ごとに支払われる賃金は含めない。
給付率をかける
賃金日額 × 給付率(この区間は80%) = 基本手当日額(1円未満切り捨て)
目安と比べる
基本手当日額 ≦ 3,611円 なら目安の範囲内
税金はかからないのに、収入としては数える
基本手当には所得税も住民税もかかりません。雇用保険法12条が、失業等給付として受け取った金銭を標準として租税その他の公課を課すことはできないと定めているためです。
一方、健康保険の被扶養者の認定では、雇用保険の失業等給付を収入として数えます。公的年金・傷病手当金・出産手当金も同じ扱いです。課税されない給付でも、生計を維持しているかの判断では生活費として見るということです。
この2つは別の制度の話なので、片方の結論をもう片方に持ち込むと判断を誤ります。退職した年の所得税の精算については退職した年の確定申告で扱っています。
租税その他の公課は、失業等給付として支給を受けた金銭を標準として課することができない。
課税されないというだけで、扶養の認定で収入に数えないという意味ではありません。
対象になるのは、実際に受け取っている期間
判定の対象は受け取っている失業等給付なので、待期の7日間と給付制限の期間には基本手当を受け取っていません。
所定給付日数を受け終わったあとも同じです。目安は見込み額に対するものなので、受給が終われば改めて認定を受けることになります。
結果として、受給する期間だけ国民健康保険に加入し、受給が終わってから被扶養者の認定を受け直すという順序になることがあります。どの時点でどう見込むかは保険者の判断です。
被扶養者でない間の健康保険と年金
被扶養者でなくなる間の健康保険は、市区町村の国民健康保険か、退職前の健康保険の任意継続のどちらかになります。どちらが安いかは前年の所得と自治体で逆転するので、退職後の健康保険の選び方で両方を計算して比べてください。
国民年金は第1号被保険者になります。配偶者の被扶養配偶者として第3号被保険者だった人は、健康保険の被扶養者でなくなると同時に第3号でもなくなるため、自分で保険料を納めることになります。
第3号から第1号への種別変更は、市区町村の窓口へ14日以内に届け出ます。届け出ないままだと未納の期間になり、老齢基礎年金の額に反映されます。
- 健康保険 — 国民健康保険に加入するか、退職前の健康保険を任意継続する
- 国民年金 — 第3号被保険者から第1号被保険者へ種別を変更する(14日以内)
- 受給が終わったあと — 改めて被扶養者の認定を受けられる
認定するのは保険者で、当サイトは判定しない
被扶養者に当たるかどうかを認定するのは、加入している健康保険の保険者です。協会けんぽと健康保険組合では扱いが異なることがあり、健康保険組合は独自の基準を定めていることがあります。
本サイトが示せるのは、法令が要件として何を置いているかと、日本年金機構が公表している目安までです。個別の認定の可否は判断しません。
基本手当日額の見込みが分かったら、配偶者の勤務先または保険者に確認してください。届出の様式や添付書類も保険者によって違います。
よくある質問
- 失業保険をもらうと必ず扶養から外れますか?
- いいえ。基本手当日額が3,611円以下であれば目安の範囲内です。日額は離職前6か月の賃金で決まるため、月収がおおむね13万円台までであれば目安を下回ります。認定は加入している健康保険の保険者が行います。
- 待期や給付制限の間は扶養に入れますか?
- その期間は失業等給付を受け取っていないため、受け取る見込み額に基本手当は含まれません。ただし、いつの時点でどう見込むかは保険者の判断になります。手続きの時期は配偶者の勤務先に確認してください。
- 扶養から外れると国民年金はどうなりますか?
- 第3号被保険者ではなくなり、第1号被保険者として自分で保険料を納めます。健康保険の被扶養者でなくなることと連動するため、市区町村へ種別変更を届け出ます。期限は14日以内です。
- 失業保険は非課税なのに、なぜ収入に数えるのですか?
- 税金と社会保険で「収入」の範囲が別に定められているためです。雇用保険法12条は失業等給付に租税を課せないと定めていますが、被扶養者の認定は生計を維持しているかの判断なので、課税されない給付も生活費として数えます。
- 年間の受給額が130万円に届かなくても外れますか?
- 日額で判断するため、総額が130万円未満でも日額3,611円を超えれば目安を満たしません。基準は年間収入130万円を360で割った日割りとして示されています。受給が終われば改めて認定を受けられます。
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出典と更新情報
- e-Gov 法令検索 健康保険法3条(定義・被扶養者)
- 日本年金機構「被扶養者になるための条件」
- e-Gov 法令検索 雇用保険法12条(公課の禁止)
- 厚生労働省「基本手当日額の計算式及び金額」
- 日本年金機構「会社を退職したときの国民年金の手続き」
データ最終確認: 2026年9月7日 / 次回の制度改定予定: 2027年8月1日