退職前の準備
退職後の企業型DC — 6か月以内に移さないと自動移換
企業型確定拠出年金(企業型DC)の資産は、退職しても原則として引き出せず、移す手続きが要ります。期限は資格喪失日(退職日の翌日)が属する月の翌月から起算して6か月以内で、移し先は転職先の企業型DCかiDeCoが中心です。期限までに移換も脱退一時金の請求もしないと、資産は国民年金基金連合会へ自動移換され、運用されないまま手数料が引かれ、その期間は老齢給付金の受給要件となる通算加入者等期間に数えられません。
自分の条件では、いつ・いくらになるか。 退職理由・年齢・勤続年数・月収の4つで計算します。
シミュレーターで計算する
この記事の読了目安 約7分
本文 約3,400字・全6節(1分500字として)
期限は「資格喪失日の属する月の翌月」から6か月
企業型DCの加入者は、退職日の翌日に加入者の資格を失います(確定拠出年金法11条)。資産を転職先の企業型DCやiDeCoへ移す期限は、この資格喪失日が属する月の翌月から起算して6か月以内です(同法83条1項1号)。
たとえば8月31日に退職すると、資格喪失日は9月1日、起算は10月1日で、期限の末日は翌年の3月31日です。「退職後6か月」と要約されることが多い期限ですが、月末に退職すると実際の末日は1か月近く後ろにずれます。
ほかの手続きの期限と並べた一覧は退職前後にやることリストにまとめています。下の計算で、自分の退職日の場合の日付を確かめられます。
当該企業型年金の企業型年金加入者であった者であって、その個人別管理資産が当該企業型年金加入者の資格を喪失した日が属する月の翌月から起算して六月以内に第五十四条の四、第五十四条の五、第八十条若しくは第八十二条又は中小企業退職金共済法第三十一条の三の規定により移換されなかったもの(当該企業型年金の企業型年金運用指図者及び次号に掲げる者を除く。)
この期限内に移されなかった資産を、企業型DCの資産管理機関が国民年金基金連合会へ移換します。資格喪失日は退職日の翌日です(同法11条)。
移し先は、転職先の企業型DCかiDeCo
厚生労働省は、離転職したときに企業型DCの資産を本人の申出で移せる先として、確定給付企業年金(DB)、企業型DC、iDeCo、通算企業年金を挙げています。このうちDBへ移せるのは、転職先のDBの規約で受け入れが定められている場合です。
転職先に企業型DCがあり、その加入者になる場合は、転職先の企業型DCへ移せます(確定拠出年金法80条1項)。条文は、転職先の加入者資格を取得していて、前の企業型DCの資格喪失日が属する月の翌月から6か月を過ぎても資産が残っているときは、前の企業型DCの資産管理機関が転職先へ移換するとも定めています(同条2項。障害給付金の受給権を持つ人を除く)。手続きの詳細は転職先の担当部署に確認してください。
転職先に企業型DCがない場合や、退職して自営業者等(国民年金の第1号被保険者)、専業主婦(夫)等(第3号被保険者)、任意加入被保険者になった場合は、iDeCoへ移す手続きが必要です。iDeCoでは、掛金を出し続ける「加入者」になるか、掛金を出さずに運用の指図だけをする「運用指図者」になるかを、移換の申出と同時に申し出ます(同法82条1項)。
当サイトは、どの移し先や運営管理機関、運用商品を選ぶべきかは書きません。個別の判断は、記録関連運営管理機関や勤務先の担当部署、必要に応じてFPに相談してください。

| 移し先 | 対象になる場面 | 手続きの窓口 | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 転職先の企業型DC | 転職先で企業型DCの加入者になる場合 | 転職先企業の担当部署 | 確定拠出年金法80条 |
| iDeCo(加入者として掛金を出す) | 転職先に企業型DCがない場合、または第1号・第3号・任意加入被保険者になった場合 | 自分で選んだ運営管理機関 | 確定拠出年金法82条・62条 |
| iDeCo(運用指図者として運用だけを続ける) | 上と同じ場面で、掛金を出さない場合 | 自分で選んだ運営管理機関 | 確定拠出年金法82条・64条2項 |
| 転職先の確定給付企業年金(DB)・通算企業年金 | DBは転職先の規約が受け入れを定めている場合に限る | 受け入れ先の制度に確認 | 厚生労働省「確定拠出年金制度の概要」 |
| 手続きをしない | 期限内に移換も脱退一時金の請求もしなかった場合 | 国民年金基金連合会へ自動移換される | 確定拠出年金法83条1項1号 |
iDeCoへ移す手続きの順番
国民年金基金連合会のiDeCo公式サイトによると、企業型DCからiDeCoへの移換は、公式サイトの運営管理機関一覧に載っている機関が扱います。選んだ運営管理機関に連絡し、書類を提出する流れです。
掛金を出してiDeCoに加入する場合は、移換の依頼とあわせて加入の申出も必要です。加入申出書には所要の書類を添付します。何が必要かは運営管理機関に確認してください。一部の運営管理機関では、加入と移換の手続きをオンラインで行えます。
企業型DCからiDeCoへ移す流れ
移し先を決める
転職先で企業型DCに加入するなら転職先の担当部署に、そうでなければiDeCoへ移す手続きを運営管理機関に確認します。
運営管理機関を選んで連絡する
iDeCo公式サイトの運営管理機関一覧に載っている機関から選び、連絡します。
個人別管理資産移換依頼書(K-003)を出す
企業型DCの資産をiDeCoへ移すための書類で、選んだ運営管理機関に提出します。
掛金を出すなら個人型年金加入申出書も出す
所要の書類を添付して、移換の依頼とあわせて運営管理機関に提出します。
期限までに移換を終える資格喪失日の属する月の翌月から6か月以内
期限内に移換や脱退一時金の請求がされないと、資産は国民年金基金連合会へ自動移換されます。
自動移換されると、運用が止まり手数料が引かれる
期限内に移換も脱退一時金の請求もしなかった資産は、国民年金基金連合会へ移換されます(確定拠出年金法83条1項1号)。移換されたことは、記録関連運営管理機関等から本人に通知されます(同条2項)。
国民年金基金連合会は、自動移換のデメリットとして次の3点を挙げています。
手数料は自動移換された資産から差し引かれ、資産が0円の人には負担がありません。下の表は国民年金基金連合会が示しているもので、自動移換された人の記録を管理する特定運営管理機関の分と、国民年金基金連合会の分に欄が分かれています。移換先の機関でも別に手数料がかかる場合があります。
自動移換されたあとも、iDeCoや企業型DCへ移すことはできます。また、資格喪失後6か月以内にiDeCoの加入者になったことが確認できた人や、自動移換の状態でiDeCoの加入者になったことが確認できた人は、移換の申出をしなくてもiDeCoへの移換処理が行われます。
- 資産の運用がされない
- 管理手数料を負担する(自動移換された日の属する月の4か月後から)
- 自動移換中の期間は、老齢給付金の受給要件となる通算加入者等期間に算入されない
| 項目 | 特定運営管理機関(円) | 国民年金基金連合会(円) |
|---|---|---|
| 自動移換されるとき | 3,300 | 1,048 |
| 自動移換されている間(月額) | 58 | 40 |
| iDeCoへ移すとき | 550 | 2,829 |
| 企業型DCへ移すとき | 550 | 記載なし |
| 確定給付企業年金へ移すとき | 550 | 記載なし |
| 脱退一時金・死亡一時金を受け取るとき | 4,180 | 記載なし |
脱退一時金を受け取れるのは例外的な場合だけ
確定拠出年金の老齢給付金は原則として60歳から受け取るもので、60歳未満で受け取れる脱退一時金は例外です。厚生労働省は、脱退一時金を受け取れるケースを3つに分けて示しています。
資産額が15,000円以下の場合は、企業型DCやiDeCoの加入者・運用指図者になっておらず、期限内であれば、元の企業型DCの記録関連運営管理機関に請求できます(確定拠出年金法附則2条の2、同法施行令59条)。期限は、移換と同じく資格喪失日が属する月の翌月から起算した6か月です。
資産額が15,000円を超える場合と、国民年金基金連合会などに請求する場合は、要件が増えます。どちらも、60歳未満であること、iDeCoに加入できない者であること、掛金を出した期間が5年以下または資産額が25万円以下であることなどを、すべて満たす必要があります。
「iDeCoに加入できない者」とは、国民年金の第1号被保険者で保険料の免除を申請している人や、生活扶助を受けていることで保険料を免除されている人、日本国籍を有しない海外居住者などです。言い換えると、iDeCoに加入できる状態の人は、資産額が15,000円以下のケースを除いて脱退一時金を受け取れません。
元の企業型DCから脱退一時金を受け取ると、それまでの期間は通算加入者等期間に算入されなくなります(附則2条の2第4項)。要件に当たるかどうかは、年金の種別や資産額、掛金を出した期間で決まるため、当サイトは判断しません。請求先の記録関連運営管理機関か国民年金基金連合会に確認してください。脱退一時金にかかる税金については、当サイトは一次資料を確認できていないため書きません。
最後に当該企業型年金加入者の資格を喪失した日が属する月の翌月から起算して六月を経過していないこと。
資産額が15,000円以下の場合に、元の企業型DCへ脱退一時金を請求できる期限です。
- 資産額15,000円以下: 元の企業型DCの記録関連運営管理機関に請求。企業型DCやiDeCoの加入者・運用指図者でなく、資格喪失日の属する月の翌月から6か月以内
- 資産額15,000円超: 同じ請求先。6か月以内に加え、60歳未満、iDeCoに加入できない、掛金を出した期間5年以下または資産額25万円以下などをすべて満たす場合
- 国民年金基金連合会などへの請求: 60歳未満、企業型DCの加入者でない、iDeCoに加入できない、掛金を出した期間5年以下または資産額25万円以下、最後に資格を失った日から2年以内などをすべて満たす場合
iDeCoに加入している人は、退職したら種別変更を届け出る
iDeCoの加入者は、就職・転職・退職で国民年金の被保険者の種別が変わると、iDeCoの加入区分も変わり、運営管理機関への届出が必要になります。届出をしないと、掛金の口座振替が一時停止になることがあります。
会社員だった人が退職して自営業者等の第1号被保険者になった場合は「加入者被保険者種別変更届(第1号被保険者用)(K-010A)」、専業主婦(夫)等の第3号被保険者になった場合は「加入者被保険者種別変更届(第3号被保険者用)(K-010C)」を運営管理機関に出します。転職して勤務先の企業年金の加入状況が変わった場合は「加入者登録情報変更届(第2号被保険者用)(K-032)」です。
退職後に国民年金保険料の免除を受ける場合は、iDeCoとの関係に注意が必要です。iDeCo公式サイトは、国民年金の保険料の納付を本人申請により免除されたときを、加入者資格喪失届(K-015)を出す場面の1つに挙げています。加入者でなくなっても資産は残り、掛金を出さずに運用の指図だけをする運用指図者になります(確定拠出年金法64条1項)。
退職後の固定費を下げる手段としての年金の免除と、iDeCoの掛金を続けるかどうかは、同じ家計の話としてあわせて確認しておくと手続きの漏れを防げます。
よくある質問
- 企業型DCの移換の期限はいつまでですか?
- 資格喪失日(退職日の翌日)が属する月の翌月から起算して6か月以内です(確定拠出年金法83条1項1号)。月末に退職すると起算が翌々月の1日になるため、「退職後6か月」より1か月近く後ろが末日になります。
- 自動移換されたあとでもiDeCoへ移せますか?
- 移せます。国民年金基金連合会の手数料表には、自動移換された資産をiDeCoへ移すときの手数料が載っています。自動移換の状態でiDeCoの加入者になったことが確認できた人は、移換の申出をしなくても移換処理が行われます。
- 退職したら企業型DCのお金を引き出せますか?
- 原則として引き出せません。60歳未満で受け取れる脱退一時金は例外で、資産額が15,000円以下の場合を除き、iDeCoに加入できない者であることなどの要件をすべて満たす必要があります。当てはまるかは請求先の記録関連運営管理機関か国民年金基金連合会に確認してください。
- iDeCoに加入していて退職したら、何を届け出ればよいですか?
- 国民年金の種別が変わった旨の届出を運営管理機関に出します。第1号被保険者になったらK-010A、第3号被保険者になったらK-010Cです。届出をしないと、掛金の口座振替が一時停止になることがあります。
- 国民年金保険料の免除を受けるとiDeCoはどうなりますか?
- iDeCoの加入者ではなくなり、掛金を出せなくなります。資産は残り、運用の指図だけをする運用指図者になります(確定拠出年金法62条4項4号・64条1項)。障害基礎年金を受給している人などは例外として加入できます。
このページを共有する
退職を控えている人に、期限と手続きをそのまま渡せます。
自分の場合の金額を確認する
退職理由・年齢・勤続年数・月収を入力すると、いつ・いくら受け取れるかを月ごとに計算します。
出典と更新情報
- e-Gov 法令検索 確定拠出年金法11条(資格喪失の時期)
- e-Gov 法令検索 確定拠出年金法83条(その他の者の個人別管理資産の移換)
- e-Gov 法令検索 確定拠出年金法82条(個人型年金加入者となった者等の個人別管理資産の移換)
- e-Gov 法令検索 確定拠出年金法80条(企業型年金加入者となった者の個人別管理資産の移換)
- e-Gov 法令検索 確定拠出年金法62条(個人型年金加入者)
- e-Gov 法令検索 確定拠出年金法64条(個人型年金運用指図者)
- e-Gov 法令検索 確定拠出年金法附則2条の2・3条(脱退一時金)
- e-Gov 法令検索 確定拠出年金法施行令59条(法附則第二条の二第一項の脱退一時金の支給要件等)
- e-Gov 法令検索 確定拠出年金法施行令60条(法附則第三条第一項の脱退一時金の支給要件等)
- 厚生労働省「確定拠出年金制度の概要」
- iDeCo公式サイト(国民年金基金連合会)「退職された方へ」
- iDeCo公式サイト(国民年金基金連合会)「iDeCo加入者・運用指図者の方へ」
- iDeCo公式サイト(国民年金基金連合会)「iDeCoの加入資格・掛金・受取方法等」
最終更新: 2026年9月26日 / 次回の制度改定予定: 2027年8月1日