64歳と65歳で受け取れる給付が変わる — 分かれ目は誕生日の前日
雇用保険法37条の2は、65歳以上の被保険者が失業した場合に支給するのは基本手当ではなく高年齢求職者給付金だと定めています。そして年齢計算ニ関スル法律と民法143条2項により、「65歳に達する日」は65歳の誕生日ではなく、その前日です。所定給付日数は自己都合で被保険者期間20年以上なら基本手当が150日、高年齢求職者給付金は被保険者期間1年以上で50日分の一時金となり、同じ人でも離職日が数日違うだけで受け取り方が変わります。
分かれ目は誕生日ではなく、その前日
年齢がいつ1つ上がるかを定めているのは、条文が2項しかない明治35年法律第50号(年齢計算ニ関スル法律)です。「年齢ハ出生ノ日ヨリ之ヲ起算ス」「民法第百四十三条ノ規定ハ年齢ノ計算ニ之ヲ準用ス」の2つだけで、日付そのものは書かれていません。
準用される民法143条2項は、期間は「その起算日に応当する日の前日に満了する」と定めています。出生の日を起算日として65年を数えると、満了するのは誕生日の応当日の前日です。つまり法律上「65歳に達する日」は、65歳の誕生日の前日にあたります。
この読み方は本サイトが別の場面でも使っているものです。受給期間の延長を育児だけを理由に申し出るときの限度が「子が3歳になる誕生日の前々日まで」になるのも、同じ2つの条文からの導出です。
計算方法と根拠
起算日を決める
出生の日から起算する(年齢計算ニ関スル法律 一)
満了日を求める
応当する日の前日に満了する(民法143条2項)
誕生日当日ではなく、その前日に年齢が1つ上がる。
65歳以上で離職すると、給付そのものが別の制度になる
雇用保険法37条の2第1項は「六十五歳以上の被保険者(中略)が失業した場合には、この節の定めるところにより、高年齢求職者給付金を支給する」と定めています。条文は年齢だけで区分しており、届出や選択の余地を置いていません。
基本手当と高年齢求職者給付金は、金額の大小だけでなく受け取り方が違います。基本手当は失業の認定を受けながら所定給付日数まで分割で受け取る給付で、高年齢求職者給付金は一時金として一括で支給されます。
- 65歳より前に離職 — 基本手当(所定給付日数まで分割)
- 65歳以上で離職 — 高年齢求職者給付金(30日分または50日分の一時金)
- 区分は年齢で自動的に決まり、選ぶことはできない
所定給付日数の違い
被保険者期間が20年以上ある人で比べると、日数には次の差があります。会社都合(特定受給資格者)は年齢帯によって日数が決まるため、60〜64歳の欄を使います。
高年齢求職者給付金の日数は年齢帯では変わらず、被保険者期間が1年以上か未満かの2択です。
| 離職の状況 | 受け取る給付 | 日数(日) |
|---|---|---|
| 65歳より前・自己都合 | 基本手当 | 150 |
| 65歳より前・会社都合(60〜64歳) | 基本手当 | 240 |
| 65歳以上 | 高年齢求職者給付金 | 50 |
日数だけでは決められない
日数は基本手当のほうが多くなりますが、それだけで有利不利は決まりません。基本手当は失業の認定を受け続けることが前提で、認定日ごとに求職活動の実績が要ります。働く意思と能力があって職を探している状態であることが要件なので、退職後に働く予定がない場合はそもそも要件を満たしません。
高年齢求職者給付金は一時金なので、支給を受けたあとに就職しても返す必要がなく、認定を繰り返す手間もありません。一方で受給期限は離職の日の翌日から1年で、この期限は延長できません。手続きが遅れると支給日数そのものが縮みます。
老齢年金との関係については、本サイトでは断定しません。基本手当と特別支給の老齢厚生年金のあいだには調整の定めがありますが、高年齢求職者給付金についての取り扱いを当サイトは一次資料で確認できていないため、日本年金機構またはお近くの年金事務所にご確認ください。
退職日を自分で決められるとは限らない
定年の年齢や退職日の扱いは会社の就業規則で決まります。定年を65歳としている会社では、退職日が誕生日なのか、その月の末日なのか、年度末なのかが規則ごとに異なります。まず自分の会社の規則を確認してください。
本サイトは「何月何日までに辞めれば基本手当になる」といった個別の判断は行いません。年齢の判定を離職日で行うか資格喪失日(離職日の翌日)で行うかについて、当サイトは条文で確認できていないためです。1日の違いで制度が変わる境目なので、退職日が決まる前にハローワークで取り扱いを確認することをおすすめします。
よくある質問
- 65歳の誕生日に退職したら、どちらの給付になりますか?
- 高年齢求職者給付金の対象になります。年齢計算ニ関スル法律と民法143条2項により「65歳に達する日」は誕生日の前日にあたるため、誕生日当日はすでに65歳以上だからです。ただし年齢の判定を離職日で行うか資格喪失日で行うかは当サイトでは確認できていないため、境目にあたる場合はハローワークにご確認ください。
- 高年齢求職者給付金は何日分ですか?
- 被保険者期間が1年以上なら50日分、1年未満なら30日分です(雇用保険法37条の4第1項)。年齢帯による違いはありません。
- 65歳を過ぎても雇用保険には入れますか?
- 65歳以上の被保険者は高年齢被保険者として雇用保険法37条の2に定められており、制度上の区分が用意されています。個別の加入の可否はハローワークが判断します。
- 高年齢求職者給付金は何度でも受け取れますか?
- 受給要件を満たすたびに受け取れます。受給回数の上限は定められていません。ただし受給期限は離職の日の翌日から1年で、延長はできません。
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出典と更新情報
- e-Gov 法令検索 明治三十五年法律第五十号(年齢計算ニ関スル法律)
- e-Gov 法令検索 民法143条(暦による期間の計算)
- e-Gov 法令検索 雇用保険法37条の2(高年齢被保険者)
- e-Gov 法令検索 雇用保険法37条の4(高年齢求職者給付金の額)
- ハローワーク「基本手当の所定給付日数」
データ最終確認: 2026年8月26日 / 次回の制度改定予定: 2027年8月1日
