ハローワークの職業訓練を受けると失業保険はどう変わる — 給付制限の解除と訓練延長給付
公共職業安定所長の指示した公共職業訓練等を受けると、基本手当の側で3つのことが起きます。第一に、正当な理由のない自己都合退職の給付制限が、訓練を受ける期間と受け終わった日後の期間について解除されます(雇用保険法33条1項1号)。第二に、訓練期間中は所定給付日数を超えても基本手当が支給されます(同24条1項)。第三に、受講手当が日額500円で40日分を限度に、通所手当が月額42,500円を上限に支給されます(施行規則57条・59条)。
自分の条件では、いつ・いくらになるか。 退職理由・年齢・勤続年数・月収の4つで計算します。
シミュレーターで計算する給付制限は、訓練を受ける期間について解除される
雇用保険法33条1項は、正当な理由がなく自己の都合によって退職した場合などに、待期の満了後1か月以上3か月以内で公共職業安定所長の定める期間は基本手当を支給しないと定めています。この規定にはただし書があり、3つの号に当たる受給資格者を対象から外しています。
1号が公共職業訓練の経路です。解除される範囲は条文で限定されていて、「公共職業安定所長の指示した公共職業訓練等を受ける期間及び当該公共職業訓練等を受け終わつた日後の期間に限り」とされています。
2号と3号は、教育訓練給付の対象講座などを受けた場合の経路です。同じ「給付制限が解除される」でも条文上は別の号で、要件も基準となる日も違います。そちらは教育訓練給付金の種類と給付率で扱っています。
ただし、次に掲げる受給資格者(第一号に掲げる者にあつては公共職業安定所長の指示した公共職業訓練等を受ける期間及び当該公共職業訓練等を受け終わつた日後の期間に限り、第三号に掲げる者にあつては第二号に規定する訓練を受ける期間及び当該訓練を受け終わつた日後の期間に限る。)については、この限りでない。
解除されるのは訓練を受ける期間から先で、受け始める前の期間には遡りません。
所定給付日数を使い切っても、訓練が終わるまで支給される
雇用保険法24条1項は、公共職業安定所長の指示した公共職業訓練等を受ける場合について、その期間内の失業している日には所定給付日数を超えて基本手当を支給できると定めています。これが訓練延長給付です。
対象になるのは訓練を受けている期間だけではありません。同項の括弧書きは、訓練を受けるため待期している期間も含めるとしていて、その長さは政令で「受け始める日の前日までの引き続く九十日間」と定められています(施行令4条2項)。
訓練を受け終わったあとにも延長の余地があります。受け終わる日の支給残日数が30日に満たず、なお就職が相当程度に困難だと公共職業安定所長が認めた場合に、30日から支給残日数を差し引いた日数を限度として支給できます(法24条2項・施行令5条1項)。
訓練そのものにも上限があり、期間が2年を超える公共職業訓練等はこの規定の対象から外れます(施行令4条1項)。
受給資格者が公共職業安定所長の指示した公共職業訓練等(略)を受ける場合には、当該公共職業訓練等を受ける期間(略)内の失業している日について、所定給付日数(略)を超えてその者に基本手当を支給することができる。
括弧書きを「(略)」に畳んでいます。原文は出典のリンク先にあります。
| 局面 | 延長の限度 | 根拠 |
|---|---|---|
| 訓練を待っている期間 | 受け始める日の前日までの引き続く90日間 | 法24条1項・施行令4条2項 |
| 訓練を受けている期間 | 訓練が終わる日まで(訓練期間が2年を超えるものは対象外) | 法24条1項・施行令4条1項 |
| 訓練を受け終わったあと | 30日から支給残日数を差し引いた日数 | 法24条2項・施行令5条1項 |
訓練中に支給される手当は3種類
技能習得手当は受講手当と通所手当の2つからなります(施行規則56条)。これに、親族と別居して寄宿する場合の寄宿手当が加わります。
受講手当は日額500円で、40日分が限度です(施行規則57条)。支給の対象になるのは、訓練を受けた日のうち基本手当の支給対象となる日に限られます。40日分という限度から、受け取れる総額は20,000円までになります。
通所手当は一律の額ではありません。交通機関の運賃相当額や自動車を使う距離で額が決まり、42,500円はその上限です(施行規則59条2項)。徒歩で片道2キロメートル未満の場合は対象外という規定もあります。
寄宿手当は月額10,700円です(施行規則60条2項)。訓練を受けるために、生計を維持されている同居の親族と別居して寄宿する場合に支給されます。
| 手当 | 額 | 根拠 |
|---|---|---|
| 受講手当 | 日額500円(40日分を限度) | 施行規則57条 |
| 通所手当 | 月額。上限42,500円 | 施行規則59条2項 |
| 寄宿手当 | 月額10,700円 | 施行規則60条2項 |
受講料は無料で、テキスト代は自己負担
厚生労働省の案内は、離職者訓練の対象を「主に雇用保険を受給している求職者の方」、受講料を「無料(テキスト代等は実費負担)」、訓練期間を「概ね3月~2年」としています。
雇用保険を受給できない人に向けた訓練は求職者支援訓練という別の枠で、こちらは月10万円の職業訓練受講手当と組み合わせて使います。要件は求職者支援制度の要件にまとめてあります。基本手当を受給している間はそちらの給付金の対象になりません。
公共職業訓練(離職者訓練)の条件
- 対象
- 主に雇用保険を受給している求職者の方
- 受講料
- 無料テキスト代等は実費負担
- 訓練期間
- 概ね3月〜2年
出典: 厚生労働省「ハロートレーニング(離職者訓練・求職者支援訓練)」 / 最終確認: 2026年9月7日
教育訓練給付との違いは「誰が指示するか」
2つの制度は名前が似ていて、どちらにも給付制限を解除する経路があるため混同されます。決定的に違うのは、公共職業訓練が公共職業安定所長の指示で始まる点です。条文上の要件がすべてこの「指示」に掛かっています。
費用の向きも逆です。公共職業訓練は受講料がかからず、受けている間に手当が出ます。教育訓練給付は本人がいったん受講費用を支払い、あとから給付率に応じた額が支給されます。
| 比べる点 | 公共職業訓練 | 教育訓練給付 |
|---|---|---|
| きっかけ | 公共職業安定所長の指示 | 本人が指定講座を選んで申し込む |
| 受講費用 | 無料(テキスト代等は実費負担) | 本人が支払い、あとから給付率に応じて支給 |
| 給付制限の解除 | 雇用保険法33条1項1号 | 同項2号・3号 |
| 訓練中の基本手当 | 所定給付日数を超えても訓練が終わる日まで支給 | 所定給付日数の範囲内 |
| 訓練中の手当 | 受講手当・通所手当・寄宿手当 | なし(教育訓練支援給付金は別の要件) |
訓練を受けている間の失業の認定
失業の認定は原則として4週間に1回ハローワークへ出頭して受けますが、雇用保険法15条3項のただし書は、公共職業訓練等を受ける受給資格者について「別段の定めをすることができる」としています。訓練の日程と認定日が正面からぶつからないようにするための規定です。
実際にどう扱うかは訓練施設とハローワークの案内によります。認定日そのものの仕組みと、出頭できないときの扱いは失業認定日に行けないときにまとめてあります。
受講の指示を出すのはハローワーク
ここまでの取扱いはすべて「公共職業安定所長の指示した公共職業訓練等」を前提にしています。指示を出すかどうかを決めるのはハローワークで、訓練にも定員と選考があります。
本サイトは条文と省令が定める取扱いを説明しますが、受講の指示を受けられるかどうかは判断しません。希望する場合は住所地のハローワークに相談してください。
よくある質問
- 自己都合で辞めても、職業訓練を受ければすぐ基本手当が出ますか?
- 公共職業安定所長の指示した公共職業訓練等を受ける場合は、その期間について給付制限が解除されます(雇用保険法33条1項1号)。ただし受講の指示を出すかどうかはハローワークの判断で、訓練にも選考があります。受け始めるより前の期間まで遡って解除されるわけではありません。
- 所定給付日数が終わっても訓練を続けられますか?
- 訓練期間中は、所定給付日数を超えても訓練が終わる日まで基本手当が支給されます(雇用保険法24条1項)。これを訓練延長給付といいます。訓練を待っている期間についても、受け始める日の前日までの引き続く90日間が対象になります。
- 受講手当はいくらもらえますか?
- 日額500円で、40日分が限度です(雇用保険法施行規則57条)。訓練を受けた日のうち基本手当の支給対象となる日について支給されます。通所手当は月額42,500円が上限、寄宿手当は月額10,700円です。
- 訓練の受講料はかかりますか?
- 厚生労働省の案内では「無料(テキスト代等は実費負担)」とされています。対象は主に雇用保険を受給している求職者で、訓練期間は概ね3月から2年です。受講を希望する場合はハローワークに相談することになります。
- 給付制限中でも受講手当はもらえますか?
- もらえません。雇用保険法36条3項が、給付制限により基本手当を支給しないこととされる期間について技能習得手当と寄宿手当を支給しないと定めています。訓練を受け始めて給付制限が解除されたあとの期間が対象になります。
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出典と更新情報
- e-Gov 法令検索 雇用保険法33条(給付制限)
- e-Gov 法令検索 雇用保険法24条(訓練延長給付)
- e-Gov 法令検索 雇用保険法36条(技能習得手当及び寄宿手当)
- e-Gov 法令検索 雇用保険法15条(失業の認定)
- e-Gov 法令検索 雇用保険法施行令4条(訓練延長給付の対象期間)
- e-Gov 法令検索 雇用保険法施行令5条(訓練終了後の延長日数)
- e-Gov 法令検索 雇用保険法施行規則56条(技能習得手当の種類)
- e-Gov 法令検索 雇用保険法施行規則57条(受講手当)
- e-Gov 法令検索 雇用保険法施行規則59条(通所手当)
- e-Gov 法令検索 雇用保険法施行規則60条(寄宿手当)
- 厚生労働省「ハロートレーニング(離職者訓練・求職者支援訓練)」
- ハローワークインターネットサービス「教育訓練給付制度」
データ最終確認: 2026年9月7日 / 次回の制度改定予定: 2027年8月1日