失業保険の基本
失業保険の延長は2種類 — 受給期間の延長と、給付日数の延長給付
失業保険で「延長」と呼ばれるものは2種類あります。1つは受給期間の延長で、病気や出産などで働けない期間があるときに、受け取れる期限(原則として離職日の翌日から1年)を後ろへずらす手続きです。もう1つは延長給付で、所定給付日数そのものを超えて基本手当が支給される仕組みです。延長給付は4つあり、いずれも本人の申請ではなくハローワークの判断や厚生労働大臣の措置で決まります。
自分の条件では、いつ・いくらになるか。 退職理由・年齢・勤続年数・月収の4つで計算します。
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「延長」は2つの意味で使われる
検索でも窓口でも同じ「延長」という言葉が使われますが、延びるものが違います。受給期間の延長(雇用保険法20条)は、受け取れる期限を後ろへずらす手続きで、もらえる日数そのものは増えません。
延長給付は、所定給付日数を超えて基本手当を支給できるようにする仕組みで、こちらは日数が増えます。申請書を出して始まるものではなく、要件に当たるかどうかをハローワークが判断します。
期限を延ばすほうの手続きは受給期間延長の申請で詳しく説明しています。このページは日数が増えるほうの話です。
| 呼び方 | 延びるもの | 根拠 | 始まり方 |
|---|---|---|---|
| 受給期間の延長 | 受け取れる期限 | 雇用保険法20条 | 本人が申請する |
| 延長給付 | 支給される日数 | 雇用保険法24条・24条の2・25条・27条、附則5条 | ハローワークの判断または大臣の措置 |
延長給付は4つある
所定給付日数を超えて基本手当を支給できる仕組みは、雇用保険法に4つ置かれています。訓練延長給付、個別延長給付、広域延長給付、全国延長給付です。これに加えて、附則に地域延長給付という暫定措置があります。
どれも「支給することができる」という書き方で、支給が義務づけられているわけではありません。要件に当たるかどうかの判断は、ハローワークまたは厚生労働大臣が行います。
| 名前 | 根拠条文 | どういうときか | 延ばせる日数の限度 |
|---|---|---|---|
| 訓練延長給付 | 雇用保険法24条 | ハローワーク所長の指示した公共職業訓練等を受けるとき | 訓練を受ける期間など(政令で定める) |
| 個別延長給付 | 雇用保険法24条の2 | 心身の状況が省令の基準に当たるとき、災害で離職を余儀なくされたとき | 60日(災害の一部は120日) |
| 地域延長給付 | 雇用保険法附則5条 | 雇用機会が不足していると大臣が指定した地域に住んでいるとき | 60日 |
| 広域延長給付 | 雇用保険法25条 | 大臣が広域職業紹介活動に基づく措置を決めたとき | 政令で定める日数 |
| 全国延長給付 | 雇用保険法27条 | 失業の状況が全国的に著しく悪化したと大臣が認めたとき | 政令で定める日数 |
個別延長給付 — 限度は60日、災害の一部は120日
個別延長給付(雇用保険法24条の2)の対象になるのは、特定受給資格者と、一部の特定理由離職者です。どの範囲が特定受給資格者にあたるかは特定受給資格者の範囲にまとめています。
そのうえで、条文は3つの場合を挙げています。心身の状況が厚生労働省令の基準に当たる場合、激甚災害の被害を受けて離職を余儀なくされ、かつ大臣が指定する地域に住んでいる場合、そして省令が定める災害の被害を受けて離職を余儀なくされた場合です。
さらに、ハローワーク所長が指導基準に照らして職業指導を行うことが適当だと認めることが要件になります。指導基準は施行規則38条の3にあり、誠実かつ熱心に求職活動を行っているのに所定給付日数を使い切るまでに就職できる見込みがないことと、最初に求職の申込みをした日以後に紹介や訓練の指示を正当な理由なく拒んだことがないことの両方を満たすこと、とされています。何が求職活動の実績になるかは、この判断の材料にもなります。
個別延長給付で延ばせる日数の限度(雇用保険法24条の2第3項)
- 心身の状況・省令が定める災害の場合
- 60日
- 所定給付日数が330日または270日の区分の場合
- 30日雇用保険法23条1項2号イ・3号イに当たる区分です
- 激甚災害の被害を受け、指定地域に住んでいる場合
- 120日
出典: e-Gov 法令検索 雇用保険法24条の2(個別延長給付) / 最終確認: 2026年9月17日
延長給付が決まると、受給期間も同じ日数だけ延びる
日数だけが増えても、受け取れる期限がそのままなら受け切れません。条文はそこも手当てしていて、個別延長給付を受ける人の受給期間は、延ばした日数を足した期間になります。
地域延長給付(附則5条3項)、広域延長給付(25条4項)、全国延長給付(27条3項)にも同じ定めがあります。つまり、日数が増える延長給付は、結果として期限のほうも自動的に後ろへ動きます。
第一項又は第二項の規定による基本手当の支給(以下「個別延長給付」という。)を受ける受給資格者の受給期間は、第二十条第一項及び第二項の規定にかかわらず、これらの規定による期間に前項に規定する日数を加えた期間とする。
20条の受給期間は原則1年ですが、個別延長給付を受けるときはその日数を足した期間になります。
地域延長給付は2027年3月31日までに離職した人が対象
地域延長給付は本則ではなく附則に置かれた暫定措置です。離職日が2027年3月31日以前であることが要件に書き込まれているため、期限を過ぎて離職した場合はこの枠そのものが使えません。
対象は特定受給資格者と一部の特定理由離職者で、雇用機会が不足していると厚生労働大臣が指定した地域に住んでいること、そしてハローワーク所長が個別延長給付と同じ指導基準に照らして適当と認めることが要件です。個別延長給付を受けられる人は、こちらの対象からは外れます。
延ばせる日数の限度は60日で、所定給付日数が長い2つの区分では30日になります。この点は個別延長給付の心身の状況・災害の場合と同じ組み立てです。
訓練延長給付は、訓練を受けている間の枠
訓練延長給付(雇用保険法24条)は、ハローワーク所長の指示した公共職業訓練等を受けている間、所定給付日数を超えて基本手当を支給できるようにするものです。訓練の内容と、指示を受けたときに起きることはハローワークの職業訓練と失業保険にまとめています。
訓練を受け終わったあとにも枠があります。受け終わる日の支給残日数が政令の定める日数に満たず、かつ受け終わってもなお就職が相当程度に困難だとハローワーク所長が認めた場合に、政令の定める日数から残日数を引いた日数を限度として支給できるとされています。
他の3つと違い、この枠は訓練という具体的な行動と結びついています。ただし訓練を受けるかどうかは指示によって決まるので、こちらも本人が選んで始められるものではありません。
広域延長給付と全国延長給付は、大臣の措置で動く
広域延長給付(雇用保険法25条)は、ある地域で職業に就くことが困難だと認められる場合に、他の地域での就職を促す計画に基づいて厚生労働大臣が決める措置です。全国延長給付(27条)は、失業の状況が全国的に著しく悪化し、政令の基準に該当したときに決める措置です。
どちらも延ばせる日数は政令に委ねられており、措置が決まっていない時期には日数が定まりません。当サイトが日数を示さないのはそのためです。措置が決まった場合はハローワークや厚生労働省から公表されます。
複数の枠に当たるときの順序は条文で決まっている
延長給付は重ねて受けられるわけではなく、受ける順番が条文に書かれています。個別延長給付が終わってからでなければ広域延長給付・全国延長給付・訓練延長給付は行われず、広域が終わってからでなければ全国と訓練は行われない、という並びです。
地域延長給付は附則5条4項の読み替えによって、この並びのうち個別延長給付のすぐ後ろに入ります。どれから受けるかを本人が選ぶ場面はありません。
個別延長給付を受けている受給資格者については、当該個別延長給付が終わつた後でなければ広域延長給付、全国延長給付及び訓練延長給付(略)は行わず、広域延長給付を受けている受給資格者については、当該広域延長給付が終わつた後でなければ全国延長給付及び訓練延長給付は行わず、全国延長給付を受けている受給資格者については、当該全国延長給付が終わつた後でなければ訓練延長給付は行わない。
略した括弧書きは、訓練延長給付が24条1項または2項による支給を指すという定義です。
延長給付中に紹介を断ると、その日以後は支給されない
延長給付を受けている間は、通常の受給中より重い定めが置かれています。正当な理由なく、ハローワークの紹介する職業に就くこと、指示された公共職業訓練等を受けること、再就職を促進するための職業指導を受けることを拒んだときは、その拒んだ日以後は基本手当が支給されません(雇用保険法29条1項)。通常の受給中の給付制限は1か月ですが、こちらは期間で区切られていません。
個別延長給付が決まったときは、ハローワークからその旨が知らされ、必要な事項が受給資格者証または受給資格通知に記載されます(施行規則38条の6)。自分が対象になっているかどうかは、この記載と窓口での確認で分かります。当サイトのシミュレーターは延長給付を計算に含めていません。判断がハローワークの裁量に係るためで、見込み額に足すと概算ではなく断定になってしまうからです。
よくある質問
- 所定給付日数を使い切りそうです。日数を延ばす申請はできますか?
- 延長給付に本人が出す申請書はありません。個別延長給付も地域延長給付も、ハローワーク所長が指導基準に照らして適当と認めたときに決まる仕組みです(雇用保険法24条の2、附則5条)。決まった場合は受給資格者証または受給資格通知に記載されます。見込みについては認定日の窓口で確認してください。
- 受給期間の延長をすれば、もらえる日数も増えますか?
- 増えません。受給期間の延長(雇用保険法20条)が動かすのは受け取れる期限だけで、所定給付日数は変わりません。日数が増えるのは延長給付のほうで、根拠条文も決まり方も別の制度です。
- 個別延長給付で延ばせるのは何日までですか?
- 雇用保険法24条の2第3項は60日を限度としています。ただし所定給付日数が同法23条1項2号イ・3号イに当たる区分の場合は30日です。激甚災害の被害を受けて指定地域に住んでいる場合は120日(同じ区分では90日)が限度になります。
- 自己都合で辞めた場合も延長給付の対象になりますか?
- 個別延長給付と地域延長給付の対象は特定受給資格者と一部の特定理由離職者で、正当な理由のない自己都合退職は含まれていません(雇用保険法24条の2第1項、附則5条1項)。一方で訓練延長給付は離職理由で対象を区切っておらず、指示された公共職業訓練等を受ける受給資格者が対象です。
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出典と更新情報
- e-Gov 法令検索 雇用保険法20条(受給期間)
- e-Gov 法令検索 雇用保険法24条(訓練延長給付)
- e-Gov 法令検索 雇用保険法24条の2(個別延長給付)
- e-Gov 法令検索 雇用保険法(附則5条 給付日数の延長に関する暫定措置)
- e-Gov 法令検索 雇用保険法25条(広域延長給付)
- e-Gov 法令検索 雇用保険法27条(全国延長給付)
- e-Gov 法令検索 雇用保険法28条(延長給付に関する調整)
- e-Gov 法令検索 雇用保険法29条(給付日数を延長した場合の給付制限)
- e-Gov 法令検索 雇用保険法施行規則38条の2(個別延長給付の対象になる特定理由離職者)
- e-Gov 法令検索 雇用保険法施行規則38条の3(個別延長給付の指導基準)
- e-Gov 法令検索 雇用保険法施行規則38条の6(給付日数の延長の通知)
- ハローワークインターネットサービス「基本手当の所定給付日数」
データ最終確認: 2026年9月17日 / 次回の制度改定予定: 2027年8月1日